鵜目鷹目05. 定期積立とドルコスト平均法

2011年3月4日掲載

定期積立とドルコスト平均法のポイント

長期的な資産形成を行う上で重要なポイントの一つは、定期積立の利用である。例えば、毎月2万円を投資信託購入に当てるといったようなことを指す。定期積立の中で、毎月定額で積み立てる方法をドルコスト平均法というが、今回はこのポイントを解説したい。

例として、毎月2万円、株価が100円と200円と交互に動く株式に投資することを考えてみよう。購入株数は、200株、100株、200株、100株、、、と続いていく。株価は100円と200円を交互に動くので、平均買い付け単価(以下、平均単価)は150円に近づいていくと思うかも知れない。ところが、この平均単価は133.3円に近づいていく。平均単価が150円になるには、毎月1万円、2万円、1万円、2万円と買い付け金額を変化させる必要がある。数学の世界では、一般的な平均を相加平均、そして、このドルコスト平均法で使われる平均は調和平均と呼ばれる。相加平均≧調和平均であることから、ドルコスト平均法での平均単価は一般的な平均より低い値となりやすい。

次に上の問題を一般化してみよう。株価がP円とK×P円の間を交互に動くとする。この場合、KはP円の何倍かに当たる係数(変動の大きさを表す)である(上の例ではP=100とするとK=2)。これにドルコスト平均法を適用してみよう。N回買い付けるとして、便宜的にNは偶数回としておくと、平均単価は2K/(K+1)×Pに収斂する。この変動性(K)を変化させた場合の平均単価を図1に示した。

図1 変動性(K)と平均単価の関係

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

変動性Kを大きくしていくと平均単価は上昇し、その値は2×Pに収斂していく。つまり、変動性が大きくなったとしても、平均単価は低い価格Pの2倍程度にしかならないということである。ドルコスト平均法は、変動の大きい資産に当てはめた方がいいですよね、というコメントがされる場合があるが、この辺りに背景があると言えよう。

前回、株式市場がボックス圏で動く場合の逆張り手法を取り上げた。その時の例では、TOPIXが1250ポイントを中心に750ポイントと1750ポイントを循環することを想定した。これを上の式に当てはめるとK=2.33、平均単価は750×1.4=1050となり、中心の1250より低い位置になることがわかる。

 

ドルコスト平均法で投資した場合

次に具体例で考えてみよう。図2にドルコスト平均法で投資した場合のTOPIXと簿価の推移を示した。ここでは簡便のため配当は無視している。1991年12月末より毎月末にTOPIXを買い付けるとすると、2011年1月末時点の平均単価1は1235円である。1050円より高いのではと思うかもしれない。これは底が1990年代はせいぜい1100だったのが、2000年代に入って、底が切り下がって750近辺になったためである。図2に1999年末より毎月末にTOPIXを買い付けた場合の平均単価2を示した。この場合だと、2011年1月末の平均単価は1134円となり、より1050円に近くなる。

天底の幅をどの程度の回数で買付けるかによっても、平均単価は変わる。一定幅ごとに購入するとしても、買付け回数が増えると、平均単価は徐々に上昇する。先のTOPIXの単純化した例、天底及び中心ラインの3点(1750、750、1250)で買付けを想定すると先の2点買いよりは平均単価は相対的に高くなる傾向にある(※)。

※より正確に言えば、どの時点で買い付けをやめるかにも依存している。

図2 TOPIXと平均単価の推移

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【図について】
期間は1991年12月末から2011年1月末まで。
平均単価1は1991年12月末、平均単価2は1999年12月末をスタート時点として計算しています。

【使用した指数等】
TOPIX

【出所】
(株)東京証券取引所データを野村総合研究所Super Focusより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

ドルコスト平均法を用いた定期積立の特性と限界

ドルコスト平均法で、最終的に利益を上げるには、売却時点の時価が平均単価より高いことである。資産価格が上昇トレンドであれば、さほど心配することもない。しかしながら、図2の日本株の例のように、想定した循環の底値が途中で下方に変化することで、利益が出るには時間が更にかかると想定外のリスクが生じることもある。その意味で投資対象の長期の期待リターンの検討を無視すべきではないし、場合によっては資産配分の見直しも必要となろう。

ドルコスト平均法を用いた定期積立は、定期的な収入がある勤労層にとって手軽な資産形成の手段である。それ故、その方法が持つ特性と限界を理解しておいた方が望ましい。

 

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