鵜目鷹目08. 海外株式投資-株式リターンと成長率、為替の関係

2011年6月24日掲載

成長率と株式のリターンの関係

海外の株式に投資する際に最初に注目するのは、成長率と株式のリターンの関係である。日本経済が低迷する一方で、海外の経済に注目が行く。しかしながら、投資において、この成長率に着目すれば直接的に成果が出るというわけではなく、人気・不人気という要因や為替要因等、さまざま考慮すべき点がある。今回は、この点について考えてみたい。
まず、以下のように株価を分解してみよう。

株価(P)=株価収益率(P/E)×名目企業利益(EN

 

      =株価収益率(P/E)×実質企業利益(ER)×インフレ(I) ・・・①

 

次に、株式リターンとして表現すると簡便的に、第i国のリターンは、

ΔPi=Δ(P/E)i+Δ(ERi+ΔI i ・・・②

となる。

このことから、内外リターンの差は、株価収益率(人気・不人気)の変化の差、実質企業利益成長率の差、インフレ率の差から生じる。第一項の株価収益率の変化の差は、短期的には極めて大きい要因ではあるが、中長期的には小さくなると考え、無視すれば、実質利益の成長とインフレ格差の2つの要因であらわすことが出来る。インフレ格差は、購買力平価の考え方に基づけば、為替のリターンとなるから、結局のところ、海外市場の円ベースの株式リターンは実質企業利益成長率と関連付けられることになる。

G7の実質GDP成長率と株式のリターンの関係

そこで、実際のそのような関係があるかを確認して行こう。企業収益成長率の代理変数として実質GDP成長率を用いて、G7各国の実質GDP成長率と円ベースの株式リターンを、図1に80年代、図2に90年代、図3に2000年代をプロットしてみた。

図1 実質GDP成長率と株式リターン(円ベース)【期間:1980~89年】

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図2 実質GDP成長率と株式リターン(円ベース)【期間:1990~99年】

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図3 実質GDP成長率と株式リターン(円ベース)【期間:2000~09年】

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【図1~3について】
各図の期間は、図1は1980年から1989年まで。図2は1990年から1999年まで。図3は2000年から2009年まで。
株式リターン(円ベース)、実質GDP成長率は年換算値です。

【使用した指数等】
各国の株式リターン(円ベース)は、各国のMSCI指数(ドルベース)を元にWMロイターの円ドルレートで円換算しています。

【出所】
MSCI、WMロイター、IMFデータをトムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これらをみると、実質GDP成長率の高い国ほど、円ベースのリターンは高いという関係が緩やかに見られる。80年代は日本、90年代は米国、そして2000年代はG7ではカナダの実質成長率が高く、株式リターンが最も高かった。

2010年代のG7とBRICSの実質GDP成長率

2010年代はどうだろうか?図4にG7にBRICS(大文字のSは南アフリカ)5カ国を加えた実質GDP成長率を示した。

図4 実質GDP成長率【期間:2010~16年】

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【図について】
2010年から2016年までの実質GDP成長率は、IMFの予測値を元に野村アセットマネジメントが年率換算した値です。

【出所】
IMFのデータより野村アセットマネジメントが作成

 

G7の中では米国の実質成長率が2.8%と最も高く、イタリアが1.3%と最も低い。日本は6番目である。ちなみに、G7の平均は2.1%、BRICSは6.1%である。上で検証した考え方を新興国であるBRICSにまで広げてみると、BRICSの方が円ベースの期待リターンは高いということになる。

冒頭で触れたように、短期的には株価収益率の変動に注意は必要である。長期においても、日本株のように1989年にはPERが60倍を超えた一方で、今では10倍台であり、投資対象によっては、長期においても意識は必要である。また、ファンダメンタルでみると、足元は、新興国の方がインフレ傾向にあり、実質成長率が低下する可能性もないではない。それらに注意しながら、国際分散投資に対して、長期のスタンスで取り組んで行きたい。

 

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