鵜目鷹目09. 企業年金の歴史に学ぶ資産配分

2011年7月29日掲載

企業年金の歴史に学ぶ資産配分

今回は、日本の企業年金を例に資産配分を学ぶことにしよう。特に、規制緩和以降、大きな資産配分変更があったが、そこに焦点を当てたい。

企業年金の運用の規制緩和が始まったのは、1997年末からである。それまでは5:3:3:2規制という資産配分の規制があった。つまり、安全性の高い資産に5割以上、株式は3割以下、外貨建て資産は3割以下、不動産等2割以下ということだった。そして、規制緩和により、一定の要件を満たしていれば、自己責任に基づいて資産配分を決めてよいことになった。図1に企業年金の平均的内外株式比率の推移を示した。

図1 内外株式比率の推移【期間:1989~2009年】

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【出所】
企業年金連合会より野村アセットマネジメントが作成

規制緩和前の内外株式比率は、高くても20%台だったが、規制緩和以降、明らかに株式比率は上昇している。ピークは1999年度末(2000年3月末)で、50%を超えている。一方、その後は徐々に低下傾向であり、特に日本株比率の低下が著しい。とはいえ、2009年度末においても、規制緩和前の日本株比率より高い水準である。

ポートフォリオ構築方法の変遷

この間、ポートフォリオ構築方法も変わった。それまでは、多くの基金で、バランス型運用を複数の運用会社に任せていたものから、資産配分は自分たちで決めて、その上で各資産の中で優れた運用商品を選ぶという特化型運用への移行である。その際、アクティブ運用が平均してインデックス運用に勝てないといった実証研究もあったことから、パッシブ・アクティブ比率といった考え方も登場して、パッシブ運用を中心に据え、残った分について、優れていると考えられるアクティブ運用を選択する考えが主流になった。

規制緩和以降の資産配分変更による効果

そこで、規制緩和以降の株式比率上昇という資産配分変更の効果を計測したのが、図2である。

図2 累積投資収益の推移【期間:1989~2010年】

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【図について】
計算にあたり、一般勘定は日本債券、その他は短期金利として扱った。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
日本債:NOMURA-BPI総合
外国株:MSCI-KOKUSAI指数
外国債:シティグループ世界国債インデックス(除く日本)
CB:NOMURA-CBPI
ヘッジファンド:HFRI Fund Weighted Composite Index
短期金利:有担保コール翌日物金利

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、HFR、短資協会のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

ケース1は、各年度の企業年金の平均的資産配分を元に、各資産の中身を全てインデックス運用としたとして計算した場合である。ケース2は、96年度まではケース1と同じだが、97年度以降は、96年度末の資産配分で固定した場合とした。指数値で計算しているので、年金基金そのものの投資収益では無いので注意されたい。

これをみると、5:3:3:2規制時代の資産配分で固定したケース2の方が、現時点ではパフォーマンスが良い。また、株式比率が低いことから、ダウンサイドリスクが小さい特性を有している。結果的に、90年代以降の日本株低迷、2000年代より海外の先進国株の循環にもある程度、対応できている。

この間、多くの基金の成熟度がより増した。この結果、給付の方が、掛け金+運用益より多くなる場合が出てくる。この場合は、元本が減少していくことになり、運用においても従来以上に、ダウンサイドリスクにより気を払う必要がある。

家計における資産配分

さて、話を家計の運用に戻したい。家計においても、資産配分をどのようにするかは、常に頭を悩ませる問題である。しかし本質的には、老後生活に「現状維持」を求めるなら、リスク資産比率の低い保守的な資産配分、「現状打破」を求めるなら、積極的な資産配分ということになろう。保守的なら、上の5:3:3:2規制を参考にするのもよい。その上で、大きな配分変更を検討する場合には、収入から貯蓄(運用)にどの程度まわすことが出来るのか、取り崩しはどの段階で行う必要があるのかといったような家計特有の制約を確認した上で判断づけることが望ましい。運用商品の選択は、その課題を解決した上での話である。

 

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