鵜目鷹目10. 企業年金の歴史に学ぶ資産配分②

2011年9月2日掲載

外貨比率にも目を向けたリスク管理

前回は、企業年金の資産配分の変遷に焦点をあてて、家計の運用に参考になる点を整理した。今回は、外貨比率にも目を向けて、リスク管理を考えてみたい。

前回のおさらいであるが、企業年金の運用の規制緩和が始まったのは、1997年末からである。それまでは5:3:3:2規制という資産配分の規制があった。つまり、安全性の高い資産に5割以上、株式は3割以下、外貨建て資産は3割以下、不動産等2割以下ということだった。そして、規制緩和により、一定の要件を満たしていれば、自己責任に基づいて資産配分を決めてよいことになった。

図1に企業年金の平均的な内外株式比率、外貨比率、修正総合利回り(※)の推移を示した。

(※)修正総合利回りとは、年金資産の運用成果を評価する評価基準の一つで、簿価ベースの平均残高利回りに時価の概念を取り入れ、時価ベースの収益率に近くなるように修正された利回りです。

図1 企業年金の平均的な内外株式比率、外貨比率、修正総合利回りの推移【期間:1989年度~2009年度】

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【図について】
ここでの企業年金の平均とは、企業年金連合会の資産運用実態調査で回答した厚生年金基金、確定給付企業年金全体の平均です。

【出所】
企業年金連合会より野村アセットマネジメントが作成

外貨比率とパフォーマンス

ここでいう外貨比率とは便宜的に外国株式と外国債券の合計比率とした。内外の株式比率のピークは1999年度の54.5%であり、その後徐々に低下して、2009年度では38%となった。2010年度は各種報道資料から推定するともう少し低下しているものと見られる。一方、為替リスクに関係する外貨比率は、2000年代に入り25~31%の間で推移している。

パフォーマンス(修正総合利回り)をみると、2000年代以降の振れは大きい。多くは株式の変動に起因するが、それに加え、為替も影響しているものと見られる。更に内外金利水準の低下も見逃せない。金利が低下しているうちは、債券の値上がり益という形でリターンにはプラスとなるが、ここまで金利が低下してしまうと、インカムでリターンを下支えする分は少なくなり、結果として、株式や為替の変動がストレートに全体のリターン変動に影響を及ぼしやすくなる。

図2に円/ドルと円/ユーロの推移を示した。

図2 円/ドル、円/ユーロの推移【期間:1993年12月末~2011年7月末(月次)】

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【出所】
WMロイターのデータをトムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

サブプライム問題が生じる直前の2007年6月末から2011年7月末の変化をみると、円/ドルは-37.5%、円/ユーロは-33.5%のリターンである。仮に外貨比率を30%とすると、そこからは-10%程度の影響が生じていると推定されよう。

以上をまとめると、株式リスクは徐々に低下している一方で、為替リスクは一定量が内包されているというのが現在の企業年金の平均的姿である。

為替ヘッジありコースの活用

さて、家計の資産運用への示唆を考えてみたい。家計が海外投資する場合の多くは為替ヘッジを考慮していないことが多い。投資信託において、為替ヘッジなしと為替ヘッジありコースがあるとしても、為替ヘッジなしコースの残高が多い。

しかしながら、本コーナーの第一回や第三回でも取り上げたように、2008年秋のリーマン・ショック以降、為替ヘッジはヘッジコストである内外金利差が縮小したことで、有用性が高まった。つまり実質的な外貨比率は為替ヘッジありコースの選択で、よりコントロールできる。

外貨比率は3割が良いのか、4割が良いのかについては、一律の答えは無い。リスク許容度と為替の見方等に依存する。とは言え、一定量保有するのであれば、原資産(株式や債券等)と為替は常に一体というより、原資産と切り離して、為替ヘッジの自由度を確保した方がリスク管理上は好ましい。