鵜目鷹目11. 分散投資の背景にあるもの

2011年10月7日掲載

分散投資をより有効に享受するために

分散投資というと、色々な資産に分散するということで捉えられることが多い。より効果的であるには、資産間の相関が低いということが前提である。2008年9月のリーマン・ショックでは、それらの間の相関が高くなり、分散が効かなかったと言われる。しかし、この言い方は正確ではなく、本コーナーの第一回でも一部取り上げたように、株式関連資産間の相関の高まりと、株式・債券間の相関の低位安定が共存しているということである。

そこで今回は、分散投資をより有効に享受するために、分散効果の背景にあるものを、今一度確認してみたい。

各資産の対日本株βの推移について

もともと変動の大きい資産は株式である。そこで、日本株に対する各資産のβ値を図1に示してみた。

図1 各資産の対日本株βの推移

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【図について】
図の期間は、2004年1月から2011年8月まで。
βの計測期間は、2002年1月末から2011年8月末まで(ただし、日本REITは2003年3月末以降、EML債は、2002年12月末以降。)。
βは月次リターンの24ヶ月ローリングで算出。
凡例で最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H)。

【使用した指数等】
日本債
NOMURA-BPI総合
日本株TOPIX(配当込み)
外国株MSCI-KOKUSAI(配当込み・円ベース)
外国債シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
日本REIT東証REIT指数(配当込み)
外国REIT
S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース)
商品
S&P GSCI商品指数
HF
HFRI Fund Weighted Composite Index(円換算ベース)
外国債H
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM株
MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
EM$債H
JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジ)
EML債
JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、HFR、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

2008年9月のリーマン・ショック前後で多くの資産のβが上昇した。上昇したのは、EM株、外国REIT、外国株、商品、日本REIT、EML債等である。多くが株式関連であり、商品、EML債も為替に晒された資産である。一方、日本債、外国債Hはβがゼロ近辺で推移して、日本株と関係ない動きをしている。

興味深いのは、外国債、EM$債H、HF(ヘッジファンド)である。上で挙げた資産に比べて、βの水準は低い。しかし、同様に上昇しており、その後、低下傾向である。著しいのはEM$債Hである。これは日本債や外国債Hと同じゼロ近辺になってきている。

βの変動要因について

次に、このβ値を分解してみよう。β値は、相関係数と相対ボラティリティの掛け算で構成されている。ここでいう相関係数とは日本株と対象資産のリターンの相関、相対ボラティリティとは日本株のボラティリティに対する対象資産のボラティリティの比のことである。それらの動きを図2に示してみた。

図2 対日本株βの分解

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【図について】
期間は2004年1月から2011年8月まで。
βは各期間の月次リターンを元に算出。
最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H)。

【使用した指数等】
日本債
NOMURA-BPI総合
日本株
TOPIX(配当込み)
外国株
MSCI-KOKUSAI(配当込み・円ベース)
外国債
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
日本REIT
東証REIT指数(配当込み)
外国REIT
S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース)
商品
S&P GSCI商品指数
HF
HFRI Fund Weighted Composite Index(円換算ベース)
外国債H
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM株
MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
EM$債H
JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジ)
EML債
JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、HFR、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

βの水準が上がるとしても、相関が上昇して上がっているのか、相関と関係なく相対ボラティリティが大きくなることでβが上昇しているかで意味が異なる。外国株、外国REITやEM株、EML債は相関、相対ボラティリティ共に上昇した。商品はむしろ相関のみが上昇した。EM$債Hは相関、相対ボラティリティともに上昇したが、直近において相関は、日本債や外国債Hと同様にマイナスになった。EM$債H、つまり、新興国のドル債(円ヘッジ)は、今のところ、欧米の債務問題と切り離されて日本債や外債H同様、安全資産として、評価されていると考えることが出来る。同じ新興国でもEML債は為替の経路があるため、相関は多少低下したものの、EM$債Hほど低下はしていない。この辺りは、債務問題の深刻化の周縁への波及で変わっていく可能性もあるが、今後も注目しておきたい。

分散効果の背景にあるもの

以上より、分散効果は株式と債券(日本債や為替ヘッジをした債券)の配分、株式関連資産間の配分の2つの配分問題に分けて考えることが出来る。前者はポートフォリオ全体のリスク量をどの程度にするかということであり、後者はリターンを高めるための分散といった話である。

前者の株式と債券の配分については、図2の下段の相対ボラティリティが参考になる。

対日本株で日本債のリスク量は1割、外債Hは2割程度である。また、EM$債Hは直近で3割程度に低下してきている。ポートフォリオ全体のリスク量を5%程度にしたいのか、10%程度にしたいかで、日本株と債券の配分をおおよそ決めることが出来る。とは言え、以前との違いは金利水準が低下している点である。金利変動がないとすれば、債券の期待リターンは低下している。

後者の株式関連資産の配分は、株式関連資産の期待リターンの見方との兼ね合いである。また、相関については、平時の低下はある程度見込めるとしても、有事には上昇するとみておいた方がよいだろう。

今後、分散投資を考える場合、ここで分析したような資産間の特性状況を認識した方がよいだろう。また当面は、欧米の債務問題の長期化によるダウンサイドリスクを踏まえることが望ましいだろう。

 

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