鵜目鷹目12. リスクパリティ法による資産配分の意義と活用法

2011年11月18日掲載

リスクパリティという資産配分手法

最近、市場が乱高下する中で、年金運用の世界では、ダウンサイドリスクを考慮した資産配分に注目する向きがある。その中で、リスクパリティという手法がある。今回は、個人投資家が活用するためのポイントを解説したい。

資産配分を教科書的に説明すると、投資家のリスク許容度と各資産の期待リターン、リスクを元に決める。投資信託のバランス型で安定型や成長型と言われるものは、それを簡便化したもので、安定型であれば株式比率を20~40%の間、成長型は60~80%の間に設定されることが多い。近年、投資対象資産が広がったことから、複数資産を均等配分した商品も見られる。一方、このリスクパリティ法は、各資産のリスクの大きさに注目して、各資産のリスク量が均等になるような配分を行う。一般的に株式リスクが債券リスクに比べて、大きいことから、株式比率が低くなりやすい。

リスクパリティの特性

以下、リスクパリティ法の特性を明らかにしていこう。比較のために、リスクパリティ法と均等配分法を用いる。具体的には、日本株と日本債のみからなる2資産、それに外国株と外国債を加えた4資産を対象として、リスクパリティ(RP)法と均等配分法を比較したい。リスクパリティ法による配分を決めるためにリスクの計算が必要であるが、より長期間分析するために3年間で計測した。図1に累積投資収益の推移を示した。

図1 累積投資収益の推移

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【図について】
期間は1973年1月末から2011年9月末まで(月次)。

【使用した指数】
日本債:日本ファンド(1983/12まで)※1、NOMURA-BPI総合(1984/1以降)※2
TOPIX(配当込み)(但し、1973/1~1989/1のリターンは東証一部の配当利回りを基に、当社独自に計算)
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし、円ベース)
MSCI-KOKUSAI指数(円ベース・為替ヘッジなし)
※2 図中の日本債の過去のパフォーマンスを算出する際、過去の期間においてデータを遡及できる期間が限定されていたため、比較的リターン特性が近いと考えられるデータ※1を用いて一部代替しています。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、短資協会のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

長期間の投資収益では、4資産のリスクパリティ法が僅差で高く、ついで日本債券、2資産のリスクパリティ、4資産均等、2資産均等、短期金利の順になっている。とは言え、途中では順位は入れ替わっており、90年代初めまでは2資産がリードして、それ以降は4資産タイプが好調となっている。そして、短期金利が劣後している。次に図2に手法別のリターン、リスク、シャープレシオを期間別に示した。

図2 手法別のリターン、リスク、シャープレシオ

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【図について】
期間は1973年1月末から2011年9月末まで(月次)。
シャープレシオは、短期金利に対する超過収益をリスクで除したもので、1リスク当たりの対短期金利超過収益を示します。
シャープレシオ=(ポートフォリオのリターン-短期金利リターン)/ポートフォリオリスク。

【使用した指数】
日本債:日本ファンド(1983/12まで)※1、NOMURA-BPI総合(1984/1以降)※2
TOPIX(配当込み)(但し、1973/1~1989/1のリターンは東証一部の配当利回りを基に、当社独自に計算)
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし、円ベース)
MSCI-KOKUSAI指数(円ベース・為替ヘッジなし)
※2 図中の日本債の過去のパフォーマンスを算出する際、過去の期間においてデータを遡及できる期間が限定されていたため、比較的リターン特性が近いと考えられるデータ※1を用いて一部代替しています。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、短資協会のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

投資効率を示すシャープレシオをみると1973年以降の全体を通じて、日本債が0.51と最も高かった。次いでリスクパリティ法、均等配分法の順である。特に同じ資産数でリスクパリティ法と均等配分法を比較すると、10年単位でみても70年代の4資産を除いて、リスクパリティ法の方がシャープレシオは高い。

全期間を通じて、日本債のシャープレシオが高いのは、言うまでもなく90年以降の金利低下局面が長いことによる効果である。実際、日本債の90年代、2000年代のシャープレシオはそれぞれ0.84、0.81と70~80年代と比較してかなり高い。
リスク水準でみると、リスクパリティ法は長期で5%程度に対して、均等配分法は9%台である。各々の株比率が15~30%、50%であることが背景にある。

次に、図3に各リスクパリティ法の株式比率の推移を示した。株式比率が最も高いのは共に81年3月である。第一次石油危機後の回復、その後の第二次石油危機になった時期である。株式市場は緩やかに上昇したこともあり、リスクは低下して、この時点では年率で6.0%となった。一方、債券の方は、第二次石油危機も影響して、金利が上昇して、リスクはこの時点で同じく5.0%になった。つまり、株式、債券のリスク水準が近接したため、株式比率は40%台半ばまで上昇したわけである。

また、4資産の方が多くの期間で、株式比率が高い。これは外国債のリスクが日本債のリスクに比べて、為替リスクを含む分だけ高い。このため、内外債合わせた平均リスクが上昇して、株式リスクに近づいたことで、株式のウエイトが高くなったと言えよう。

図3 リスクパリティ法の株式比率の推移 

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【図について】
期間は1973年1月末から2011年9月末まで(月次)。

【使用した指数】
日本債:日本ファンド(1983/12まで)※1、NOMURA-BPI総合(1984/1以降)※2
TOPIX(配当込み)(但し、1973/1~1989/1のリターンは東証一部の配当利回りを基に、当社独自に計算)
シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし、円ベース)
MSCI-KOKUSAI指数(円ベース・為替ヘッジなし)
※2 図中の日本債の過去のパフォーマンスを算出する際、過去の期間においてデータを遡及できる期間が限定されていたため、比較的リターン特性が近いと考えられるデータ※1を用いて一部代替しています。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、短資協会のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

リスクパリティ法の意義

等しいリスク量となるように資産配分を行うリスクパリティ法を用いることで期待されるのは、各資産のシャープレシオが長期的に同じであると仮定すれば、各資産の相関が低くなるほど、ポートフォリオのシャープレシオは高くなるということである。今回の例で言えば、全体のリスク水準が均等配分法と同程度になるようレバレッジをかけると、均等配分より高いリターンが期待される。

とは言え、個人投資家がレバレッジをかけた資産配分を行うというのは現実的ではない。だとすれば、リスクパリティ法の意義は、長期的には保守的な資産配分が維持されることに加えて、わかりやすさ重視の均等配分のもつ潜在的リスクを排除するといったところにあると考えられる。

この応用例として、資産配分の1/N(N分の1)問題がある。以前、米国の401kにおいて、提供された商品がN個あると投資家は1/Nの割合で配分する傾向にあると言われた。これは、時間の経過と共に魅力的な商品が出てくることで、気がつくと保有商品数が増えているということである。色々な商品に投資しても、それらのリスクが株式に関係深いリスクであれば、いざという時には相関が高くなって、分散効果を毀損してしまうのは、前回見た通りである。この意味において、リスクパリティ法を用いて、リスクを確認する意味は十分あると思われる。

 

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