鵜目鷹目13. 株式のPER低下とグローバル化

2011年12月30日掲載

世界的なPER低下とグローバル化の関係について

株価の割高・割安を示す尺度の代表的なものはPER(株価収益率)である。これは、企業の収益(一株あたりの利益)に対して、株価は何倍かを見るものである。

現在日本株のPERは13~15倍で、過去の水準から見るとかなり低い。80年代後半が50倍以上であったことを考えると隔世の感がある。このPER低下は、世界的な現象で、米国においても、PER低下が著しい。今回はこのPER低下とグローバル化の関係について考えてみたい。

日米のPER推移について

図1に日米のPER水準の推移を示した。

図1 日米株式市場のPER推移

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【図について】
期間は1960年から2011年まで。

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ社のデータをトムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、①日本のPER水準は60年代に戻った、②日米の乖離はほぼ無くなった、ということがわかる。
前者の日本の水準について、60年代との違いは、現在の方が、成長率、金利水準共に低いという点である。日本の場合、60年代は日本自体が新興国の扱いで、米国よりPER水準は低かった。しかしながら、高成長の継続、70年代の2つの石油危機を乗り越えたこと、85年のプラザ合意以降の景気拡大等を踏まえ、PERは上昇した。90年代に入っても、前半はその余韻でPERが高かった。後半の金融危機では、企業収益が減少する中でテクニカルに上昇した。2000年代に入り、ITバブル崩壊以降、その後の景気拡大があるものの、基本的には低下傾向にあり、グローバルな水準に収斂してきた。一方、米国は、80年代はリストラに悩んだものの、90年代の成長により、PER水準は上昇した。その後、2000年のITバブル崩壊を契機に徐々にPERは低下し、今日に至っている。

PERの低下について

PERの低下については、理論的な金利や成長率以上に投資マインドの要素を含んでいる。投資家がリスクに対して要求する対価というリスク・プレミアムである。これが現在は高くなっていると思われる。バランスシート不況の中で、PERがどこまで下がるかは、政策対応や企業のイノベーションに対する投資家の確信にかかっており、見極めはなかなか難しい。ちなみに歴史的には、日本では1950年代に10倍以下、米国においても、第二次世界大戦直後や70年代後半に10倍以下の例があったことは記憶しておきたい。

グローバル化と株価について

一方、日米のPER水準が同程度になってきたことであるが、株価評価で言えば、同じ枠組みの中で、企業の成長率に焦点が当たりやすくなったとも言える。勿論、各々の国内環境の違いはある。しかしながら、企業の活動がグローバルになり、資金調達コストも各地に分散すれば、それらが似てくるとも言える。それが経済のグローバル化である。

こうした中で、経済のグローバル化が進んだ米国において、内需と外需の違いが株価指数のパフォーマンスに現れている。一例として、図2に、NYダウとS&P500の累積投資収益とその相対パフォーマンスを示した。

図2 NYダウとS&P500の累積投資収益と相対パフォーマンス

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【図について】
期間は1988年1月末から2011年11月末まで(月次)。

【使用した指数】
NYダウ:ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価(ドルベース)
S&P500:S&P500株価指数(ドルベース)

【出所】
スタンダード&プアーズ社、ダウ・ジョーンズ社のデータをトムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

長期的傾向として、NYダウの方がS&P500に比べて、パフォーマンスがよいことが見て取れる。つまり、米国においても海外収益をより取り込んでいる企業の多いNYダウの方が優位ということである。

実は、日本株についても同様のことが見られる。図3に、東証33業種のうち、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器の4業種を便宜的に外需セクターとして、等ウェイト指数を作成してTOPIXを比較してみた。

図3 外需セクターとTOPIX

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【図について】
期間は1988年1月末から2011年11月末まで(月次)。

【使用した指数】
外需:東証業種別株価指数の33業種のうち、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器の4業種の指数を等ウェイトで合成した指数
TOPIX:東証株価指数(TOPIX)

【出所】
(株)東京証券取引所のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

日本株においても、外需セクターが継続的にアウトパフォームしている。円高対応による企業の現地化も進み、着実にグローバル化に対応してきていると言えよう。為替が円高・ドル安が続いていることを考慮すると、日本の外需セクターの方が、ドル安である米国のグローバル企業に比べて、健闘していると言えよう。

優れた企業は、政策に頼るのではなく、自ら事業機会をみつけ、市場創造していく。その意味で、ここで扱った外需セクター以外にも、近年積極的に海外展開をしていく会社が増加しているのが今日の日本株である。この動きが全体に広がれば、TOPIXもより上昇しやすくなるだろう。

グローバル化とインデックス投資

こうした現象とインデックス投資を結びつけるとしたら、一つは、時間軸の違いに着目し、多くの企業がグローバル化に対応していく中で、インデックスそのものがいずれ上昇するとして、逆張りに徹する。
もう一つは、より短い時間軸として、サブインデックス型を補完的に追加して利用すること等が考えられよう。

 

【使用した指数の著作権等】
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