鵜目鷹目14. 視点を変えてみよう

2012年2月3日掲載

視点を変えて見えてくるもの

今回は、視点を変えると見えてくるものを2つ紹介したい。一つは、個人金融資産に関すること。もう一つは、運用のパフォーマンスについてである。

個人金融資産について

最初の個人金融資産について、日本の個人金融資産は1,400兆円と言われる。この中で預貯金が多いとも言われる。一方で、米国の個人金融資産に占める株式や投信の比率が高いと言われる。ところで米国の個人金融資産がどうなっているかについての記述は見かけることは少ないが、2010年度末で4,100兆円である。日本の約2.8倍の大きさである。米国は株式や投信の運用で増やしていると思いがちである。確かにドルベースでみると、過去20年で年率+6.1%伸びており、同じ期間の日本の年率+1.9%より高い。ところが、この米国の個人金融資産を円ベースで評価しなおすと年率で3.3%の伸びと鈍化する。図1に円ベースで表示した日米家計の金融資産の推移を示した。

図1 日米家計の金融資産

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【図について】
期間は1990年から2010年まで。

【出所】
日本銀行、FRBより野村アセットマネジメント作成

一人当たりでみると日本の方が豊かになっていた

これをみると、日米で差がついたのは、1994~97年度にかけてであり、1997~2010年度にかけて見ると、米国の伸びが年率で+0.6%、日本は+1.1%と、日本の方が高い伸びである。結局、ドルが下落しているため、円でみると余り伸びていない。

次に、人口の伸びを考慮してみよう。1990~2010年度で米国の人口は年率+1.2%の伸び、一方、日本は+0.2%の伸びである。これを考慮した一人当たりの金融資産の伸びは、米国が年率+2.1%、日本は+1.7%の伸びとなる。また、先と同じ1997~2010年度でみると米国は年率で-0.5%と減少している一方で、日本は+1.0%で増えている。つまり、一人当たりでみると日本の方が豊かになっていると言える。

このようにしてみると、米国で頑張って運用していても、それを円転してみると、日本の家計が行っていたのとさほど変わりがないということである。もっともそうは言っても、米国の方が絶対金額は大きいことには留意したいものの、90年代前半はむしろ日本の方が多かったことを考えるなら、過度に悲観することはないと考えられる。

図2 一人当たり金融資産の推移

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【図について】
期間は1990年から2010年まで。人口は年末ベースです。

【出所】
日本銀行、FRB、厚生労働省、US Consensus Bereau、国連より野村アセットマネジメント作成

日米のインフレ率格差という背景

こうしたことが起きる背景は、為替問題である。第8回で解説したように、米国の方が、日本に比べてインフレ率が高い。そのため、中長期的に為替は減価しやすい。もっとも、足元で起きている日本のデフレをどう解消するかという話と、日米のインフレ率格差の問題は別に議論する必要があり、あくまでここでは後者としての理由である。

運用パフォーマンスについて

次に後者の運用パフォーマンスの例を紹介したい。世界株と世界債券に50%ずつ投資したものを円、ドル、ユーロから眺めてみよう。つまり、日本、米国、ユーロを使っている国からみた世界ということである。図3にそれを示した。

図3 通貨別の累積投資収益の推移

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【図について】
期間は1993年12月末から2011年12月末まで(月次)。

【使用した指数】
世界株:MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス
世界債券:シティグループ世界国債インデックス

【出所】
MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インクより野村アセットマネジメント作成

 

同じ投資でもドルベースでの累積投資収益が最も高く、次いでユーロ、そして最も低いのが円ベースである。2000年代半ばは、ドルと円ベースは遜色ないパフォーマンスであったが、2007年夏以降の下落からすると円ベースでは回復していないのに対して、ドルベースは高値更新している。この背景は通貨の強さの違いである。2008年以降は円が最も強くなったことがこうした結果をもたらしている。その結果、図4に示したように世界株と世界債の相関は、円ベースのものが最も高く、ユーロベースのものはかつてないほど低相関になっている。ユーロベースでみると世界株と世界債への分散は非常に効果的であるが、円ベースでみると、逆でさほど分散効果がないということになる。

図4 通貨別の世界株と世界債券の相関推移

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【図について】
各通貨ベースで、月間収益率を元に、世界株と世界債券の月末値の前月比変化率の相関係数を、過去24か月分によって算出しています。

期間は1993年12月末から2011年12月末まで。

【使用した指数】
世界株:MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス
世界債券:シティグループ世界国債インデックス

【出所】
MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インクより野村アセットマネジメント作成

通貨の理解を深めることがよりよい資産運用につながる

以上、2つの例の共通点は、通貨である。その通貨から国外をみると、全く異なった状況となってしまう。従って、海外からの「視点提供」が、日本からみた場合と必ずしも適切な答えになっていないことがある。このことは、あくまで日本がおかれた状況を客観的に理解する必要があるし、海外からの意見もあくまで円ベースでものを言っているのか否かも確認していく必要があることを示唆している。後者の例でいえば、為替ヘッジの度合いが立ち位置によって異なるわけである。結局のところ、我々は通貨について、より理解を進めていく必要がある。それが、よりよい資産運用につながっていくと考えられる。

直近の1月25日のFOMCでは、2014年の遅くまで超金融緩和政策をとり、インフレ率目標を2%と明確化した。この点からは為替に影響が出てくるものと思われる。今一度、資産運用戦略を点検しておきたい。

 

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