鵜目鷹目15. デフレ脱却競争下の資産運用

2012年3月2日掲載

デフレ脱却競争下における資産運用の再点検

2007年夏に顕在化したサブプライム問題は、2008年秋のリーマン・ショックを経て、世界経済に激震をもたらした。その後、各国の金融緩和、財政支出拡大政策により、いったんは回復軌道に乗った。しかし2011年は、景気回復の息切れ、日本の東日本大震災やタイの洪水による供給制約、ギリシャ問題、米国の債務上限規制問題が出てきたこと等から、世界経済に再び暗雲が垂れこみ始めた。財政政策に関しては、緊縮論も強まり、拡大一辺倒は難しくなってきている。

こうした中、昨年12月8日ECB(欧州中央銀行)理事会は3年物資金供給オペの実施を決定、21日に4892億ユーロの資金を供給した。また、今年1月25日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、2014年の遅くまで超低金利政策を維持する可能性が高いことを表明した。そして、2月14日日銀もインフレ目標を1%と明確に金融緩和継続を決定した。足元のマネタリーベースは、米国が前年比で30%近い伸び、ECBも同30%以上の伸び、日本も10%を超える伸びと、世界は金融緩和頼みとなっている。

今回は、こうした中における家計の資産運用を再点検していきたい。ここでとりあげるのは、①デフレ状況、②資産配分の見直しの2つである。

デフレ状況の確認

まず、物価を中心に①デフレ状況を確認していこう。図1に主要各国の消費者物価の推移を示した。

図1 消費者物価の推移

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【図について】
期間は一部を除き2008年8月から2011年12月まで(月次)。(ドイツのみ2008年8月から2012年1月まで。) 
QEとは「量的金融緩和政策(QuantativeEasing)」のことを指します。

【出所】
各国消費者物価指数等のデータより野村アセットマネジメント作成

 

リーマン・ショックによって、各国共に物価は低下傾向を示したが、矢継ぎ早の金融緩和政策もあり、08年末~09年春を底に日本を除く4ヶ国は上昇に転じた。つまりフロー面で、未だにデフレ傾向を示しているのは日本だけである。日銀もインフレ目標1%を明確にしたものの、各国の物価動向や金融政策の相対比較の面からすれば、短期的にはともかくとして、中期的に円高基調が止まるかは微妙なところである。

資産配分の見直しについて

次に、②資産配分の見直しについて考えてみたい。ここでいう資産配分の見直しとは、投資対象、戦術的資産配分等を指す。先進国は欧州のソブリンリスクが高い国を除けば、長期金利が2%程度まで低下していることからも、投資対象としてある程度のインカムの水準を確保するなら、新興国債券まで広げることが肝要である。そして、為替ヘッジの容易さを考慮すれば、そのドル債に着目すべきだろう。戦術的資産配分は、難しい領域であるが、先日のFOMC表明、ECBの動きからすると、低い為替ヘッジコスト状態が続くものとみられる。

図2 内外金利差の推移

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【図について】
期間は1994年12月末から2012年1月末まで(月次)。

各国の金利差は、各国金利から日本金利(LIBOR1ヶ月)を引いた値です。

【使用した指数等】
各国の金利は、LIBOR1ヶ月

【出所】
BBA等のデータより野村アセットマネジメント作成

 

リーマン・ショック後の主要5ヶ国の株式のリターンを図3に示した。

図3 主要5ヶ国の株式のリターン比較

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【図について】
期間は2008年8月末から2012年1月末まで(月次)。

【使用した指数】
日本株:TOPIX(配当込み)
米国株:S&P500(配当込み)
英国株・ドイツ株・フランス株:MSCI各国指数
ヘッジコストは各国金利(LIBOR1ヶ月)と日本金利(LIBOR1ヶ月)の差

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ社、BBA等のデータより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

現地通貨ベースでみると、米国と英国は10%以上のリターンを出す一方で、日本やドイツ、フランスはマイナスリターンであった。円ベースでは、円高の影響を受けて、米国、英国もマイナスに転じている。
一方、この間、ヘッジコストが低下したことで、円ヘッジでは現地通貨ベース同様に米国、英国がプラスのリターンを維持している。為替ヘッジの有無がリターンに大きな影響を与えており、注意深い対処がリターンをあげる上で重要である。

各国のデフレ脱却競争の今後と資産運用

各国のデフレ脱却競争は続く。冒頭で記述した以外では、ECBが2月9日に主要政策金利を1.0%で据え置くことを決定し、同日イングランド銀行も量的緩和策の資金枠を拡大して3250億ポンドとし、また主要政策金利を0.5%で据え置くことを決定した。そして、2月29日ECBは2回目の3年物資金供給5295億ユーロ(約57.2兆円)を行うことにした。

1930年代の大恐慌においても、金本位制から早く離脱して金融緩和をした国ほど、大恐慌から早く脱出している。今回も、図1の物価状況をみれば、施策の違いから少しずつ差がついているように見える。

資産運用において、過度な悲観を避けるべきである。むしろ、足元で行われているデフレ脱却競争の状況をこまめに観察することが肝要である。その上で、投資対象の見直し、為替ヘッジ等の戦術的な対応が望まれよう。

 

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