鵜目鷹目19. 経済局面で変化する投資効率

2012年8月24日掲載

経済局面別の相場の基本観を確認

本コーナー第17回の終わりの方で、各資産のリスクプレミアムも従来と違った動きを見せると述べた。
これは、デフレ局面とインフレ局面で異なり、デフレ局面では債券に有利な相場が続くという基本観を示す。勿論、デフレの中でも短期的には株価が上昇する局面もあるので、あくまで基本観である。今回は、この点を確認していきたい。

日本の各経済局面における相場の推移

図1に、国内の株式、債券と短期金利、消費者物価指数(CPI)のリターン、シャープレシオを示した。
シャープレシオは、株式、債券の短期金利に対する超過収益を各々の資産のリスクで除したものである。
1リスクあたりの短期金利に対する超過収益(リスク・プレミアム)を意味する。

図1 日本の各資産のリターン、シャープレシオ

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【図について】
期間は1965年1月から2012年6月まで(ただし、日本債は1965年2月から2012年6月)。
リターンは月次リターンを年率換算。
CPIの1965-69年及び1970-74年は年毎の変化率を平均した値。

【指数について】
日本株はTOPIX(配当込み)、日本債はNOMURA-BPI総合、日本短期金利は有担保コール翌日物金利。

【出所】
東京証券取引所、野村證券等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

インフレ率の高かった60年代後半から80年代後半にかけて、株式のシャープレシオは債券のそれに比べて総じて高い。ところが90年に始まるバブル崩壊、その後のデフレ局面においては、株式のシャープレシオは総じて低く、マイナスのことが多い。一方で債券は、総じて高い。これは、インフレ率の低下に伴って、傾向的に金利が低下し、債券価格は上昇したことを反映している。

米国の各経済局面における相場の推移

次に米国についてもみておこう。図2に同様の各資産のリターンとシャープレシオを示した。

図2 米国の各資産のリターン、シャープレシオ

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【図について】
期間は、1955年1月から2012年6月まで(ただし、米国債のみ1973年1月から2012年6月まで)。
リターンは月次リターンを年率換算。

【指数について】
米国株はS&P500(配当込み)、米国債は1973年1月から1975年12月までがバークレイズ米国国債指数、76年1月以降はバークレイズ米国総合債券指数、米国短期金利は3ヵ月物米国財務省短期証券流通利回り。

【出所】
スタンダード&プアーズ社等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

米国の場合は、図の期間中でインフレ率がマイナスになるというデフレ環境にない。現状はせいぜい、インフレ率が低下するディスインフレ状態である。一方、60年代後半からのインフレ状態においてみると、1970-74年において株式のシャープレシオがマイナスになり、債券も1970-79年にかけてマイナスであった。その後、インフレ率の低下に伴い、株式は上昇、債券価格も上昇し、シャープレシオも上昇した。その後も、その状態が続く中で、債券のシャープレシオは高止まりする。その一方で株式は、2000年代に入り、ITバブルの崩壊、サブプライム問題、リーマン・ショックなどの価格下落によってシャープレシオはマイナスになった。

日米の株式と債券の相関

米国の場合、足元では必ずしもデフレとは言えないが、金融緩和によって短期金利はほぼゼロ金利となっている。従って、実質的な短期金利はマイナスに落ち込み、より債券や株式に資金シフトしやすい分だけ、よりシャープレシオも嵩上げされやすい状況になっていると考えられる。

また、デフレ的環境になるにつれて、株式と債券の相関も変化している。図3にそれを示した。日本の場合、95年以降は株式と債券の相関がマイナス相関であり、米国の場合も、2000年代以降はマイナス局面が増えている。株価の下落と金利の低下(債券価格上昇)は、逆相関の要素であるが、以前よりも金利水準が低いために、インカムの寄与に比べ、金利変化がよりストレートにリターンに反映されやすくなったと言えよう。

図3 株式と債券の相関

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【図について】
日本は1965年1月から2012年6月まで。米国は1973年1月から2012年6月まで。
相関の計算には月次リターンを用いた。

【指数について】
日本株はTOPIX(配当込み)、日本債はNOMURA-BPI総合、米国株はS&P500(配当込み)、米国債は1973年1月から1975年12月までがバークレイズ米国国債指数、76年1月以降はバークレイズ米国総合債券指数。

【出所】
東京証券取引所、野村證券等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

バランスシート不況下での投資戦略

バランスシート不況が続く限り、債券有利の相場が続くだろう。より正確に言えば、ソブリンリスクのない国の債券が有利ということだろう。とは言え、先進国の金利水準はかなり低下しており、従来のような金利低下余地は小さくなってきている。

一つの戦略としては、欲張らずこれに甘んじることである。一方、少しでも利回りを引き上げたい場合、エマージング債(ドル建て)為替ヘッジやハイイールド債為替ヘッジ等、金利水準の高いものを為替ヘッジして、少し組み込んでおくことである。また、リスク許容度が高いのであれば、株式の逆張りを検討しておくことが好ましいだろう。

 

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