鵜目鷹目22. リスク水準とリターンの関係-幾何平均と単純平均の比較から

2012年11月30日掲載

リスク水準からみた資産運用

1990年代以降、日本株は低迷している。一般的なアクティブファンドは、上昇相場を想定して、リスク水準やβ値を少し高めにした運用手法が多かったが、結果的には、裏目に出ている。

年金の世界では、最小分散というリスク水準の小さい銘柄を主に組み合わせた運用が脚光を浴びている。投資信託の世界でも2000年代半ば以降、配当利回りの高い銘柄が注目(結果的にリスク水準も小さい)されたが、これらは底流で株式市場が上昇しづらい中で、どうやってリターンをあげていくかという工夫とも解釈可能である。

そこで、今回は、リスク水準からみた資産運用について考えてみたい。まず、図1に日本株と日本債の期間別の幾何平均リターン(※)、単純平均(算術平均)リターン、リスクを示した。

(※)幾何平均リターンとは、各期間の複利による平均リターン。

(ご参考)

β値

図1 日本株と日本債のリターンとリスク

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【図について】
期間は1970年1月から2012年9月まで。
幾何平均リターンは年率換算した値。単純平均リターンは月次収益率の平均を年率換算した値。
リスクは月次収益率の標準偏差を年率換算した値。数字は%表示。

【指数について】
日本株は、TOPIX(配当込み)。日本債は、NOMURA-BPI総合。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これによると、日本株の方は、多くは幾何平均リターンが単純平均リターンに比べて低い。一方で日本債は幾何平均リターンの方が単純平均リターンに比べて高い。

幾何平均は、期初と期末の比較であり、単純平均は1年ごとの平均である。例えば2年間の投資期間を考えるとして、1年目が5%、2年目が10%のリターンとすると、2年目の終わりには、100が115.5になる。これを幾何平均で表現すると7.471%、単純平均だと7.500%となる。このように幾何平均と単純平均は一致しない。

リスクの大きさと幾何平均、単純平均の差の関係

図1の右の方に、幾何平均マイナス単純平均の値を表示してみた。上記の日本株、日本債に加え、外国株(円)、外国債(円)、日本REIT、外国REIT(円)、商品(円)、ヘッジファンド(円ヘッジ)、新興国株(円)、新興国ドル債(円)、新興国ドル債(円ヘッジ)で同様の計測をしてプロットしたのが図2である。

図2 リスクの大きさと幾何平均、単純平均の差の関係

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【図について】
期間は、日本株、日本債は1970年1月~2012年9月までを10年毎(直近は2010年1月~2012年9月)で計測。以下同様に、外国株(円)、外国債(円)、外国REIT(円)、商品(円)は1980年1月~2012年9月、
新興国株(円)、ヘッジファンド(円ヘッジ)は1990年1月~2012年9月、新興国ドル債(円)、新興国ドル債(円ヘッジ)は2000年1月~2012年9月、日本REITは2010年1月~2012年9月で計測。
幾何平均は年率換算したリターン。
単純平均は月次収益率の平均を年率換算したリターン。

リスクは月次収益率の標準偏差を年率換算した値。

【指数について】
日本株は、TOPIX(配当込み)。
日本債は、NOMURA-BPI総合。
外国株(円)は、MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)。
外国債(円)は、シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)。
商品(円)は、S&P GSCI商品指数。
外国REIT(円)は、S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース)。
新興国株(円)は、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)。
ヘッジファンド(円ヘッジ)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
新興国ドル債(円)は、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース)。
新興国ドル債(円ヘッジ)は、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
日本REITは、東証REIT指数(配当込み)。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、HFR、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、BBA等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグ等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、資産クラスに関わらず、リスク水準が大きいほど、乖離が大きく、かつ幾何平均が単純平均に比べて小さい傾向にある。実のところ、一定の前提をおけば、それらは定式化され、リスク水準が大きいほど、幾何平均は単純平均に比べて小さくなる。一部でプラス方向に乖離したものがあるが、これは一方的に上昇している局面で生じやすい。一方的に上昇するとは、変動性が小さく、つまりリスク水準が低下する一方で上昇するためである。

話を戻して、リスク水準が高いと幾何平均が単純平均に比べて低いということは、タイミングリスクが大きくなるとも言える。世の中にバランス型商品があるが、分散効果を通じてリスク水準を下げ、幾何平均と単純平均の差を縮小する、つまりタイミングリスクを小さくしようとする工夫と言えよう。より一般化すれば分散投資は、それを目指しているとも言える。

分散投資の工夫を踏まえた資産運用

どのリスク水準で運用するかは投資家のリスク許容度の問題ではあるが、こうしたからくりを理解しつつ、分散投資に努めたいものである。特にバランスシート不況下のように株式等のリスク水準の高い資産が単に循環性を強めているだけの時はなおさらである。

 

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