鵜目鷹目23. 家計の収入、貯蓄、資産配分の概観と運用戦略

2013年1月21日掲載

名目GDPが減少する中での貯蓄の運用戦略

失われた10年とか20年とか言われて久しい。名目GDPが減少する中で、家計の収入や貯蓄も減少傾向にある。当然、貯蓄の中身の配分も大きく変化してきている。今回は、家計の動向を概観した上で、貯蓄の運用戦略についてもう一度検討してみたい。

家計の動向

まず図1に年齢層別の収入推移、図2に年齢層別の貯蓄推移を示した。いずれも家計調査の2人以上の世帯の四半期データを用いている。

図1 年齢層別の収入推移

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【図について】
期間は2002年1月から2012年6月まで。2人以上の世帯の四半期データの値。

【出所】
総務省、家計調査のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

図2 年齢層別の貯蓄推移

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【図について】
期間は2002年1月から2012年6月まで。2人以上の世帯の四半期データの値。

【出所】
総務省、家計調査のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、①収入、貯蓄共に低下傾向にある、②貯蓄/収入比という観点でみると、30歳代、30歳未満の低下が著しい。②については、90年代後半からの所得減少傾向の影響と低金利の影響を大きく受けているものと思われる。以上のことは、各年齢層における資産配分にも影響を与えている。図3に年齢層別の通貨性預金(※)比率の推移を示した。

(※)通貨性預金とは、貯金、普通預金、当座預金、通知預金及び納税準備預金。

図3 年齢層別通貨性預金比率の推移

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【図について】
期間は2002年1月から2012年6月まで。2人以上の世帯の四半期データの値。

【出所】
総務省、家計調査のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

収入減少の影響を大きく受けた30歳未満、30歳代の通貨性預金比率の上昇が著しい。そして40歳代も2008年秋のリーマン・ショック以降で、上昇傾向が著しい。なお、ここでは示していないが定期性預金比率はむしろどの年齢層も低下している。つまり、通貨性預金と定期性預金の利率が低位であること、定期性は長期間固定されることから、動きやすいように待機として、通貨性預金の比率を引き上げていると解釈できる。

次に図4に年齢層別の株式・株式投信比率の推移を示した。

図4 年齢層別の株式・株式投信比率の推移

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【図について】
期間は2002年1月から2012年6月まで。2人以上の世帯の四半期データの値。

【出所】
総務省、家計調査のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

2007年位までは、30歳代以上は株式・株式投信比率を高めていたが、2008年秋のリーマン・ショック以降は、低下傾向にある。30歳未満はサンプル数が少ないので変動が大きいが、それでもリーマン・ショックを経て低下傾向が読み取れる。

以上の動きは、2008年秋のリーマン・ショック以降の経済環境や株式市場が極めて厳しかったことを示している。収入は経済環境に影響を受け、貯蓄の資産配分は株式市場の影響を受けやすい。後者の方は、従来の投資の枠組みを見直すことが必要である。

主要資産の推移

そこで、主要な資産の推移(図5)を確認して行こう。

図5 主要な資産の累積投資収益推移

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【図について】
期間は2007年12月末から2012年10月まで。2007年12月末を100として指数化。

【指数について】
日本債は、NOMURA-BPI総合。
日本REITは、東証REIT指数(配当込み)。
日本株は、TOPIX(配当込み)。
外国債は、シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)。
外国REITは、S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース)。
外国株は、MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)。
EM$債Hは、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
EML債は、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)。
EM株は、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)。
短期金利は、有担保コール翌日物金利。
CPIは、消費者物価指数。

【出所】
野村證券株式会社、(株)東京証券取引所、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、MSCI、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

2007年末を100とすると、結果として最もパフォーマンスが良かったのがEM$債H(新興国ドル債円ヘッジ)であった。次いで日本債券であった。これら資産は、本コーナーで既に指摘しているが、日本株との相関が低い。また、株式関連はREITも含めて低調である。

運用をする上での2つの問題

運用は何に投資するかという問題と、どのように投資するかという問題がある。何に投資するかは、機関投資家、個人投資家共通の問題であり、またパフォーマンスに大きく影響する。その意味では、従来の投資対象先を広げた点検が必要である。
一方、どのように投資するかという点で、個人投資家、特に勤労者は給与という毎月のキャッシュフローが生じるという特性があり、それを活かした積立投資を利用できる。典型的なドル・コスト平均法は、一定期間ごとに一定額を投資する方法である。この戦略は持久戦の戦略である。この場合のリスクは市場の下落である。勿論、下落し続けると評価損は増えていく。従って、投資対象の分散との組み合わせが肝要である。

図6に日本株、日本債、EM$債Hを例にドル・コスト平均法で積み立てていった評価損益率の推移を示した。

(ご参考)

定期積立とドルコスト平均法

図6 ドル・コスト平均法による評価損益率の推移

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【図について】
期間は2007年12月末から2012年10月まで。
評価損益率は、時価評価/投資金額計-1と計算。毎月一定額を積立した場合の評価損益率の推移。

【指数について】
日本株は、TOPIX(配当込み)。
日本債は、NOMURA-BPI総合。
EM$債Hは、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
日本株 3:日本債 7は、毎月の積立金額の3割を日本株、7割を日本債へ投資した場合。
日本株 3:EM$債H 7は、毎月の積立金額の3割を日本株、7割をEM$債Hへ投資した場合。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

日本株のみでも評価損益率は直近で-10%程度に留まっている一方で、日本債やEM$債Hのみでは好パフォーマンスになっている。時間分散していることもあり、図5に比べてマイルドである。また、日本株を3割、債券を7割積み立てた場合はより好ましいパフォーマンスとなっている。

特に若い年齢層では、退職までの時間が長いのが強みである。積立という持久戦略と投資対象の分散の組合せで、乗り切ることは可能である。この基本に立ち返って、デフレ環境下を乗り越えていきたいものである。

 

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