鵜目鷹目24. 家計の資産配分と資産運用

2013年2月5日掲載

家計の貯蓄や各種年金の資産配分の比較

今回は年々広がりつつある確定拠出年金(以下、DC)の運用について、家計の貯蓄や各種年金の資産配分との比較の上で、抱えている課題を考えていこう。

図1に、3つの統計に基づく年齢層別の株式等比率を示した。

図1 年齢層別の株式等比率

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【図について】
株式等は、全国消費実態調査、家計調査の定義で株式・株式投信、DCでは投信の中で国内株式、外国株式、その他(REIT、自社株、コモディティ)、そしてバランス型の半分(株式比率50%程度の商品の残高が多いことを考慮)の合計より算出。
また、年齢層については、年齢層を統一するために、全国消費実態調査では、5歳ごとの区切りを集計世帯加重で10歳ごとにした。
同様に70歳以上を60~69歳とまとめて60歳以上に調整した。DCでも19歳までを20~29歳とまとめて29歳までとした。

【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(2009)、総務省・家計調査(2012年4-6月)、運営管理機関連絡協議会・確定拠出年金統計資料(2012年3月)のデータより野村アセットマネジメント作成

債券に関する「投資教育」の必要性

今回利用した3つの統計とは、厚生労働省の発表している全国消費実態調査、総務省の発表している家計調査、そして運営管理機関連絡協議会の発表しているDCである。全国消費実態調査は、5年に1度調査しており、2人以上世帯のサンプル数が48000余りある。一方、家計調査は四半期に一度で、2人以上世帯のサンプル数は6000余りである。

全国消費実態調査、家計調査の年齢層別の株式等比率はほぼ同じで、また年齢層が上がるにつれて上昇している。最も高い60歳以上でも9%台である。一方、DCの方は20%前後と高く、特に49歳までが高い。DCの株式等比率が他の統計に比べて高いのは、元々、年金運用という貯蓄と異なった枠組みにあるためである。

DCの株式等比率20%程度は、年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が運用している公的年金の基本資産配分の内外株式比率20%と同水準である。つまり、DCも平均像でみれば、公的年金同様に保守的な運用となっている。ところが違いは、債券や預貯金の部分にある。

図3に示すように公的年金は株式以外の基本資産配分は日本債67%、外国債8%、短期資産5%となっている。為替の絡む外国債を除くと日本債と短期資産合わせて72%となる。

一方、DCの実態は図2に示したように預貯金比率38~47%の範囲である。内訳は5年物の定期預金も多いが、現在の低金利を考えると普通預金と変わりない。また、投信カテゴリーの中に日本債があるが3.4~5.9%の範囲で、バランス型の国内債券部分を考慮しても、5~9%に過ぎない。金利が正常化すれば、定期預金と普通預金の利回り差が生じてくるので、多少改善されるだろうが、現状では、公的年金の日本債運用より利回りは低いことになる。

次に、DCと貯蓄(全国消費実態調査や家計調査)の預貯金比率を比較すると前者の方が低い。元々、家計貯蓄における年金運用の要素は全体の一部であり、不時への備えという予備的動機に基づく要素や住宅資金の準備もあるので預貯金比率がより高めに出やすいとも言える。

一方、前述したDCにおける預貯金比率は、株式市場への漠とした不安感が押し上げている可能性はある。しかしながら、預貯金比率と日本債比率の関係は、公的年金の日本債券、短期資産比率の関係と比較してもバランスに欠けるように見える。言い換えると、債券に関する「投資教育」が必要だろう。

図2 年齢層別預貯金比率 

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【図について】
預貯金は、全国消費実態調査、家計調査ともに通貨性預金と定期性預金の合計。

【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(2009)、総務省・家計調査(2012年4-6月)、運営管理機関連絡協議会・確定拠出年金統計資料(2002年3月末~2012年3月末)のデータより野村アセットマネジメント作成

企業年金の資産配分

次に、年金運用という点で公的年金に加えて、企業年金の資産配分例を図3に示した。

図3 タイプ別年金の資産配分

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【図について】
数字は%表示。厚生年金はGPIFの基本資産配分。厚生年金基金、基金型企業年金、規約型企業年金は2012年3月時点の平均。

【出所】
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、企業年金連合会のデータより野村アセットマネジメント作成

 

表の右端にある内外株合計でみると、GPIFが運用している厚生年金<規約型企業年金<基金型企業年金<厚生年金基金の順となっている。

この点からすると、厚生年金が最も保守的な配分である。残った内外債券他についても、各カテゴリーで工夫がみられる。DCの預貯金に相当することが多い短期金利に4割も5割も配分するということはない。

抱えている課題と貯蓄やDCの運用の可能性

以上、DC運用の課題を家計貯蓄や各種年金の資産配分の比較から検討してみた。まとめてみると、

①株式等比率が公的年金並みであるが、その是非含めた再検討
②預貯金比率が高いが、債券への理解を進めることで、運用の効率化が可能

家計の所得が伸び悩む中で、貯蓄やDCの運用は老後の生活設計の上で上記の点は、より注目していく必要があるだろう。

DCの枠を広げてみても、投資信託の中の選択肢は増えてきている。日本債を検討する際にも、日本債そのものに加え、為替をヘッジした外国債による日本債代替の選択肢もある。そして、その領域は先進国のみならず新興国債券まであり、自由度は大きく広がってきている。