鵜目鷹目25. デフレ脱却と経済、資産運用の変化

2013年3月14日掲載

経済や株式市場、そして資産運用における変化

日本の株式市場は2012年の秋から上昇基調を続けている。特に11月の衆議院選挙前から自民党の経済政策に注目が集まったことが背景にある。選挙の結果、安倍内閣が誕生した。その後も、大胆な金融緩和と物価上昇率2%を目標としたことで、円安も支援材料となり、株式市場は上昇基調を強めた。

今回は、こうした傾向が続くとしたら、経済や株式市場、そして資産運用においてどのような変化が生じるかについて考察をしておきたい。

物価上昇率と失業率

まず、安倍内閣の金融緩和に対して賛否両論がある。緩和したところで物価上昇率が2%になることはないという論調もある。元々、物価上昇率が2%になるためには賃金も上昇していく必要がある。日本の名目賃金は非正規雇用の増加もあって、97年を境に減少傾向にある。足元では65歳までの雇用義務化のため、賃金カーブの傾きの変更の議論がある一方で、安部首相の要請もあり、一部の企業で賃上げに踏み切る企業も出てきており、上記の目的が徐々に共有されつつあるようだ。

この問題を俯瞰するに当たり、一つの目安として、図1に日本のフィリップス曲線(※)を描いてみた。物価上昇率がプラスになるには、失業率が少なくとも4%より低い状態が必要だし、物価上昇率が2%を目指すとなると、失業率を3%台前半にしていくことが必要のように見える。3%台前半になれば賃金も安定して物価上昇率もプラス圏に入ってくる。

(※)フィリップス曲線とは、物価上昇率と失業率の関係を示したもの。

図1 フィリップス曲線

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【図について】
期間は1971年から2012年まで。

【出所】
総務省・消費者物価指数、総務省・失業率のデータより野村アセットマネジメント作成

内外需と株価

一方で、株価は企業収益で決まる。従って、国内から利益は出ていなくても、海外からの収益があれば、株価は上昇する。資産運用を考える場合に気をつけなければならないのは、この点である。表現を少し変えると、国内経済は低迷して内需系企業は収益が上がらなくても、海外経済が成長して外需系企業の収益が上がることも理論的にはあり得ることである。具体的にみてみよう。図2に外需セクター指数とTOPIXとの相対比較を示した。80年代半ばまでは比較的循環的に動いたのに対して、90年代半ばより継続的に外需セクター指数の上昇傾向がみられる。この間、TOPIXは循環的な推移を示している。デフレ環境の中で、内外需のアンバランスさが、こうした相対株価の乖離を生じさせているとも言える。

この意味で、個別企業への投資はともかくとして、インデックス運用を中心に資産運用を行う場合には、内外需がバランスしている経済の方が、効率はよいと考えられる。デフレ脱却となれば、より内外需がバランスしていく可能性が高い。

図2 外需系企業の相対株価

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【図について】
期間は1968年1月末から2013年1月末まで。外需セクター指数、TOPIXは1968年1月末を100として指数化。

【指数について】
外需セクター指数は、東証業種別株価指数(全33業種)のうち、機械、電気機器、輸送機器、精密機器の4セクターの変化率の単純平均で
算出。
TOPIXは、TOPIX(配当なし)。

外需セクター指数/TOPIXは、外需セクター指数÷TOPIX×100と計算。

【出所】
(株)東京証券取引所のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

物価上昇率と株式リターン

デフレから脱却すると株式市場はどうなるか?下の図3が、物価上昇率と株式リターンの長期的な関係を示したものである。

図3 物価上昇率と株式リターンの関係

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【図について】
期間は1950年から2012年まで。

【指数について】
株式リターンは、TOPIX(配当込み)。
物価上昇率は、1950から55年までが1975年基準消費者物価指数、1956から70年までが1985年基準消費者物価指数、1971年以降は2010年基準消費者物価指数から算出。

【出所】
(株)東京証券取引所、総務省・消費者物価指数のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、物価上昇率が高かった時代は株式リターンも高いことがわかる。勿論、物価が上昇するには需要増加、企業収益拡大、賃金・物価上昇といった関係が内外需バランスの上で、うまく循環していくことが必要である。

株式と債券の投資効率の推移

また、株式と債券の投資効率の点でも是正が起きるだろう。図4に株式と債券の投資効率性を示すシャープレシオの推移を示した。90年代以降の不況の中で株式は低迷し、金利低下によって債券のリターンは大幅に上昇した。結果として、債券のシャープレシオは高位にある。インフレ率が適正化する中で、この関係もより調和のとれたものになっていくだろう。

図4 日本の株式と債券のシャープレシオの推移

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【図について】
期間は、株式が1964年12月末から2013年1月末。債券が1965年1月末から2013年1月末まで。

【指数について】
株式は、TOPIX(配当込み)。
債券は、日本ファンド(1983年12月まで)※1、NOMURA-BPI総合(1984年1月以降)※2。
※2 図中の債券の過去のシャープレシオを算出する際、過去の期間においてデータを遡及できる期間が限定されていたため、比較的リターン特性が近いと考えられるデータ※1を用いて一部代替しています。

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

そうなると、資産配分を考える上でも、変化を想定する必要が出てくる。ここ20年は株式でリスクをとっても報われにくい状態が続いたが、それも適正方向に向かうことになるだろう。また、ドルコスト平均法を活用した長期積立投資も、より成果が出やすくなっていく可能性が高い。

デフレ脱却した世界

以上をまとめておこう。インフレ率が適正化され、経済のアンバランスが解消されると、企業収益がどのセクターにも行き渡ることで、株式のインデックス投資もより効率的になっていくだろう。また、株式と債券の投資効率性のアンバランスさも解消されていくだろう。その結果、取ったリスクに見合ったリターンが得られるようになるだろう。一朝一夕にその世界に行くわけではないが、2012年の秋からの株式市場の変化が示唆する経済の行方を粘り強く見守って行きたい。

 

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