鵜目鷹目26. ヘッジファンドを超えるために

2013年4月18日掲載

通常の資産の組合せでヘッジファンドを超えられるか

ヘッジファンドという言葉が新聞や雑誌に登場するようになって久しい。今回は、通常の資産の組み合わせで、ヘッジファンドを超えられるかということを検討してみたい。結論から言えば、資産分散によっても、多くのことができることが分かった。

ここでいうヘッジファンドとは、株式で言えば、現物の買い持ちと売り持ちを組み合わせて、リターンをあげる手法である。言葉の定義を突き詰めていくと統一的な見解はないようであるが、以下では、便宜的に、それらの集積されたインデックスであるヘッジファンドインデックスで代用して分析を進めたい。つまり、ヘッジファンドインデックスのパフォーマンスを通常の資産クラスのインデックスで超えられるかということである。

各資産のリスクとリターンを確認

まず、各資産クラス及びヘッジファンドのリターン、リスクを確認しておきたい。図1に示した。

図1 各資産クラスのリターンとリスク

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【図について】
期間は、短期金利、日本債、日本株については1969年12月末から2013年1月末まで。
外国債、外国株については1970年1月末から2013年1月末まで。
外国REITについては1971年12月末から2013年1月末まで。
EM株は1984年12月末から2013年1月末まで。
ヘッジファンド(円ヘッジ)については1989年12月末から2013年1月末まで。
EM$債Hについては1993年12月末から2013年1月末まで。
EML債については2002年12月末から2013年1月末まで。
日本REITについては2003年3月末から2013年1月末まで。
平均リターンは、月次収益率の平均を年率換算した値。リスクは月次収益率の標準偏差を年率換算した値。

【指数について】
短期金利は、有担保コール翌日物金利。
日本債は、NOMURA-BPI総合。
日本株は、TOPIX(配当込み)。
外国債は、シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)。
外国株は、MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)。
外国REITは、1971年12月末から1989年12月末まではNAREIT指数、1989年12月末以降はS&Pリート・グローバル指数。
EM株は、MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)。
ヘッジファンド(円ヘッジ)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(ドルベース)を日米短期金利差で控除。
EM$債Hは、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
EML債は、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)。
日本REITは、東証REIT指数(配当込み)。

【出所】
野村證券株式会社、(株)東京証券取引所、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、MSCI、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、HFR、WMロイター、短資協会、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、長期ではヘッジファンドがリスクの割にリターンがよいことがわかる。ところがヘッジファンドのリターンは、1990年代と2000年代以降では変化している。図2に2年ローリングのリターンの推移をドルベースと円ヘッジベースで示した。

図2 ヘッジファンドのローリングリターン

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【図について】
期間は、1991年12月末から2013年1月末まで。
ローリングリターンは各時点から過去24ヶ月間の月間収益率を年換算した値。

【指数について】
ヘッジファンド(ドルベース)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(ドルベース)。
ヘッジファンド(円ヘッジ)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(ドルベース)を日米短期金利差で控除。
短期金利は、有担保コール翌日物金利。

【出所】
HFR、短資協会、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

1990年代と2000年代以降でヘッジファンドのリターンが変化

ドルベースと円ヘッジベースの違いは、ヘッジコストつまり内外短期金利差の違いでもある。リーマン・ショック以降は、日米金利差は縮小したことでドルベースと円ヘッジベースのリターンはほぼ同じとなったが、肝心なリターンの水準が低下していることが伺える。この背景には、ヘッジファンド業界全体が大きくなったことで平均ではリターンが出にくくなったことや2000年代に入り、世界的に株式が安定的に上昇するというより循環するようになったこと等が考えられる。株式が循環するようになった背景には、バランスシート不況になったことが挙げられる。これが解決すれば、株式は上昇するだろう。そうなればヘッジファンドのリターンも改善する可能性もある。一方でヘッジファンド業界の規模問題は解消する訳ではないので業界の平均的なリターンが90年代の水準に単純に戻るとは言い難い。

リスク水準の観点から通常の資産の組合せを考える

さて、リターンの予測は難しいが、リスクは比較的安定している。図3に示したが、ヘッジファンドのリスクは5~10%の間を推移している。10%程度に上昇するのは、株式リスクも上昇する時と同期している点に注意したい。逆に言えば、通常時は5%前後のリスク水準というのがヘッジファンドである。

図3 ヘッジファンドのリスク推移

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【図について】
期間は、1991年12月末から2013年1月末まで。
リスクは各時点から過去24ヶ月間の月間収益率の標準偏差を年換算した値。

【指数について】
米国株は、S&P500。
米国債は、バークレイズ米国債指数。
ヘッジファンド(円ヘッジ)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(ドルベース)を日米短期金利差で控除。
短期金利は、有担保コール翌日物金利。

【出所】
スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、HFR、短資協会、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

実は、このリスク5%という数字は図1からみると、資産の組合せではより工夫が必要なゾーンでもある。何故なら、5%以下の資産は日本債と短期金利しかない。

相関が大きく変化したリーマン・ショック以降では

そこで、日本債を中心に日本債と相関の低い資産を組み合わせていく。勿論、あくまで長期の姿であり、例えばリーマン・ショック後の2009年以降でみれば、リスク水準の相対感は異なったとしても相関が大きく変化したのは、このコーナーでも何回か述べたことである。それを手掛かりに、一例を作ってみたのが図4である。

図4 ヘッジファンド(円ヘッジ)と通常の資産を組合せたポートフォリオのパフォーマンス推移

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【図について】
期間は、2008年12月末から2013年1月末まで。2008年12月末を100として指数化。
リスクは月間収益率の標準偏差を年換算した値。

【指数について】
ヘッジファンド(円ヘッジ)は、HFRI Fund Weighted Composite Index(ドルベース)を日米短期金利差で控除。
合成ポートフォリオは、日本債35%、日本REIT7.5%、EM$債H40%、EML債17.5%を組み合わせた指数。
日本債は、NOMURA-BPI総合。
日本株は、TOPIX(配当込み)。
日本REITは、東証REIT指数(配当込み)。
EM$債Hは、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(米ドルベース)を日米短期金利差で控除。
EML債は、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)。
短期金利は、有担保コール翌日物金利。

【出所】
野村證券株式会社、(株)東京証券取引所、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、HFR、WMロイター、短資協会、英国銀行協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

合成ポートフォリオ(日本債35%、日本REIT7.5%、EM$債H40%、EML債17.5%を組み合わせたもの)とヘッジファンドインデックス(円ヘッジ)の推移を示したものである。ここで、合成ポートフォリオが勝ったということを強調するつもりはない。それよりも株式性資産が日本REIT7.5%で、残りの92.5%は債券資産であり、外貨部分はEML債の17.5%だけであることから、リスクは合成ポートフォリオの方が小さいというのが特徴である。また、EM$債HやEML債は債券でありながら、外国株との相関も多少ある。直接株式を保有していなくても、うまく影響を取り込める特性がある。これらの特性を活かすことで、ヘッジファンド以上の成果を出せる可能性もあり得るということである。

リスクに着目した資産の組合せに工夫の余地あり

以上をまとめておこう。ヘッジファンドのリスク水準は長期でみれば6~7%である。そのリスク水準の範囲内でヘッジファンド並みかそれ以上のリターンを得るには、日本債を軸にしつつも、伝統4資産を除いた資産及び外貨比率(言い換えると為替ヘッジ)を一定以内で組み合わせることが肝要である。そのためには、日頃から「幅広い資産への目配り」が大切ということである。環境によって組合せは変わっていくだろうが、リスクの大きさに着目した資産の組み合わせにもっと工夫してよいと思われる。

 

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