鵜目鷹目28. アベノミクスと日本企業の収益状況

2013年7月19日掲載

アベノミクスと日本企業の収益状況

昨年の11月半ばを起点として、アベノミクスが始まった。株式市場は上昇、また、円安も進んだ。5月の半ば以降、調整傾向となっており、アベノミクスに対して批判の声も出てきている。リフレについての議論は色々あるが、そもそも企業の収益が良くなることで賃金も上昇するし、インフレも許容できることは確かである。そこで、今回は日本企業の収益性の状況を概観しておきたい。

ROEの推移とその内訳

図1に法人企業統計における製造業、非製造業のROEの推移を示した。法人企業統計では広範囲をカバーしているのが特徴である。

図1 製造業、非製造業のROEの推移

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【図について】
期間は、1976年度から2011年度まで。
ROE算出に当たり、分母は2007年度までは自己資本(純資産)の期初・期末の平均値。2008年度以降は株主資本の期初・期末の平均値。

【出所】
財務省・法人企業統計年報のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

これをみると、バブル崩壊以降のROEの低下が目立つ。2000年代に入り、少しずつ回復傾向であるものの、80年代の水準にはほど遠い。

ROEの変動は、売上高純利益率、総資本回転率、株主資本比率の3つに分解できる。図2に、売上高に対する各段階での利益率の推移を示したが、それら自体は80年代以前に比べて決して落ちていないし、非製造業においては、直近は過去最高水準に達している。つまり、企業はフローの収益性改善を続けているわけだ。

図2 売上高に対する各利益率の推移

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【図について】
期間は、1975年度から2012年度まで(純利益率は2011年度まで)。2012年度のみ四半期を合計して算出。

【出所】
財務省・法人企業統計年報のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

一方で、90年代半ば以降のデフレ的環境によって、企業の売上は伸び悩み、その中で利益をあげても、積極的な投資をする訳ではないため、結果として、株主資本比率の上昇(図3)や総資本回転率の低下を招き、それが結果としてROEの伸び悩みとして表れている。特に非製造業では、97年末の金融危機以降より、株主資本比率が上昇している。この株主資本比率の上昇がなければ、ROEは現在より2倍以上の水準になっているものと推測される。それだけ金融危機が、その後の財務政策の行動に影響を与えた可能性がある。

図3 株主資本比率の推移

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【図について】
期間は、1975年度から2011年度まで。2006年度までは自己資本比率。2007年度以降は株主資本比率。

【出所】
財務省・法人企業統計年報のデータより野村アセットマネジメントが作成

変動性を高めるROE、売上高利益率

金融危機後、本格化したデフレ環境下で、売上げが伸びない中では固定費の削減にも限界があり、図4に示したように、ROEや売上高利益率の変動性(変動係数)は大きくなっている。

図4 ROEや売上高利益率の変動性の推移

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【図について】
期間は、1976年度から2011年度まで。
変動係数は標準偏差を平均で除した値で平均水準調整後の変動の大きさを示す。

【出所】
財務省・法人企業統計年報のデータより野村アセットマネジメントが作成

バランスよく改善していくことを期待

アベノミクスの特徴は、金融緩和、財政政策、成長戦略のセットである。金融緩和自体の効果は、国内事情だけで決まる訳ではなく、海外の金融緩和状況次第で変化していく。また、一般的には金融緩和によって、インフレ期待を引き上げて、時間を稼いでいる間に、実物経済の名目量が改善していく必要がある。ミクロでの主体はあくまで企業であり、政府が行うことは、企業の環境整備に加え、分配(賃金や社会保障等)のマクロ運営である。時間はかかるが、それぞれが粘り強く取り組むことで、全体がバランスよく改善していくことを期待したい。