鵜目鷹目30. 米国インフレ率と債券投資

2013年10月4日掲載

債券投資について

米国のQE3が終わるのではないかということで、債券の動きがやや不安定になっている。今回は、米国のインフレ率と長期金利の関係を分析した上で債券投資を考えてみたい。

パフォーマンスの観点から

図1に様々なカテゴリーの債券のパフォーマンスを示した。

図1 各債券のパフォーマンス推移

unome_takanome30_1.gif

【図について】
期間は、1993年12月末から2013年8月末まで。(ただし、EML債は、2002年12月末以降。)1993年12月末を100として指数化。
凡例で最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H)。

【使用した指数等】
日本債:NOMURA-BPI総合
外国債:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
外国債H:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM$債:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース)
EM$債H:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジ)
EML債:JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)

【出所】
野村證券株式会社、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

長期でみると、新興国ドル債(EM$債、以下EM$債。円ベース)が最も高く、次いで新興国ドル債ヘッジ(EM$債H、以下EM$債H)、外国債(円ベース)の順で、日本債と外国債ヘッジ(外国債H、以下外国債H)は同じ水準であった。新興国現地通貨建債(EML債、以下EML債)は、計測期間が短いので、特にコメントしない。

この計測期間は、米国や日本の金利は低下傾向であるため、パフォーマンスが良い。図2に各期間のリターン、リスク、シャープレシオを示した。

図2 各期間のリターン、リスク、シャープレシオ

unome_takanome30_2.gif

【図について】
期間は、1993年12月末から2013年8月末まで。(ただし、EML債は、2002年12月末以降。)月次リターンを年率換算。
シャープレシオは、短期金利に対する超過収益をリスクで除したもので、1リスク当たりの対短期金利超過収益を示します。
シャープレシオ=(ポートフォリオのリターン-短期金利リターン)/ポートフォリオリスク。
凡例で最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H)。

【使用した指数等】
日本債:NOMURA-BPI総合
外国債:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
外国債H:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM$債:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース)
EM$債H:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジ)
EML債:JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)
短期金利:有担保コール翌日物金利

【出所】
野村證券株式会社、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

1994年からだと日本債のシャープレシオが最も高く、2003年からだとEM$債Hが最も高い。また為替を挟んだ外国債、EM$債、EML債をみると新興国債の方に軍配が上がる。リターン水準を考えると、日本から投資をみた場合、この期間では新興国債への投資が魅力的であったことがわかる。

米国の長期金利、インフレ率の動向から

この期間中は世界的金利低下局面で、新興国もその例外ではない。世界に最も影響力のある米国の長期金利、インフレ率(CPI)の動向をみておこう(図3)。

図3 米国の長期金利、インフレ率の推移

unome_takanome30_3.gif

【図について】
期間は、1993年12月末から2013年8月末まで。インフレ率(CPI)は前年同月比。

【使用した指数等】
米国長期金利:10年物財務省証券利回り

【出所】
FRB等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

この期間中インフレ率は、総合、除く食料・エネルギー共に低下はさほど見られない。一方で、長期金利は低下した。つまり、名目の長期金利からインフレ率を差し引いた実質長期金利は低下した。
この背景には、①インフレ率が低位で安定化していること、②2007年夏から始まったサブプライム問題をきっかけに、2008年9月にはリーマン・ショックがおきて、FRBは大胆な金融緩和に踏み切ったことがある。つまり、実質金利を引き下げてバランスシート不況の痛みを緩和しようということである。
その結果債券利回りは低下し結果として債券リターンは上昇した。足元ではこの超金融緩和状態の出口を模索しており、それが足元の金利変動を不安にしている。言い換えると、経済の正常化により、実質長期金利の上昇がいずれ起きるわけである。

そこで図4で、より長期の米国長期金利、インフレ率、実質長期金利の推移を示した。

図4 長期間の米国長期金利、インフレ率、実質金利の推移

unome_takanome30_4.gif

【図について】
期間は、1958年1月末から2013年8月末まで。インフレ率(CPI)は前年同月比。

【使用した指数等】
米国長期金利:10年物財務省証券利回り

【出所】
FRB等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

インフレ率はベトナム戦争が本格化した60年代半ばより上昇し、73年秋には第4次中東戦争を端にした第一次石油危機、そして79年のイラン革命に端を発した第二次石油危機時に頂点に達した。このインフレ時期の実質金利は低い。その後、長期金利が上昇する中でインフレ率の上昇が低下し始め、実質金利は上昇し、83年8月には8.9%に達し、その後低下し、今に至っている。この期間の平均実質金利は2.5%である。

これを前提にすると、足元のインフレ率1.8%程度に2.5%を足した4.3%が一つの正常時の目安となろう。そこに行くまでには前提となるバランスシート不況からの回復や失業率の更なる低下も必要だろう。
ただ、いずれそうした状況が来れば、その過程で債券のリターンは低下するが、その低下の度合いは、金利上昇スピード次第である。

また、図4でみるようにインフレ率が上昇しないにも関わらず、金利が上昇していることも見られるが、その後低下していることが多い。このことから、実際の金利は前述した正常時の目安をオーバーシュートする可能性はある。一方で、それが短期的に投資機会をもたらすとも言える。実際、短期金利は低位状態が続いている。市場の行き過ぎを判断するにも、インフレ率を注視しておくことが大切である。

足元で、一部の新興国ではインフレ率が上昇傾向のところもある。EML債の場合は、インフレ率の上昇が中期的な通貨安をもたらす可能性もある点には留意したい。

逆張りや時間分散の活用が従前以上に肝要

最後に債券の特徴として、利回りが上がると、そこからの投資は魅力的になることがあげられる。従って、逆張りや時間分散の活用が従前以上に肝要となるだろう。

 

【使用した指数の著作権等】
●NOMURA-BPI総合の知的財産権とその他一切の権利は野村證券株式会社に帰属しています。また、同社は当該指数の正確性、完全性、信頼性、有用性を保証するものではなく、ファンドの運用成果等に関して一切責任を負いません。
●シティグループ世界国債インデックスは、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク(CGMI)が開発した日本を除く世界主要国の国債の総合利回りを各市場の時価総額で加重平均した債券インデックスで、CGMIの知的財産であり、指数に関するすべての権利は、CGMIが有しています。
●JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイドは、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー(以下、「インデックス・スポンサー」といいます。)に帰属します。インデックス・スポンサーは、本インデックスを参照する証券、金融関連商品又は取引(以下各々「商品」といいます。)を、賛助し、支持し、又はその他の方法で推奨するものではありません。本書に含まれる商品に関する情報は、その提供のみを目的としたものであり、商品の購入若しくは販売を目的とした募集・勧誘を行うものではありません。本インデックスの情報源及びこれに含まれるデータ若しくはその他の情報は信頼できると思われるものですが、インデックス・スポンサーはその完全性及び正確性を保証するものではありません。インデックス・スポンサーは、いかなる商品への投資の妥当性について、明示黙示を問わず、何らの表明又は保証をするものではありません。インデックス・スポンサーは、いかなる商品の管理、マーケティング又は取引に関して、何らの責任又は義務を負いません。本インデックスに関する追加の情報については、www.morganmarkets.com をご覧ください。当情報の著作権は、ジェー・ピー・モルガン・チェース・アンド・カンパニーに帰属します。