鵜目鷹目33. 地域バイアスを超えて

2014年2月14日掲載

地域バイアスの特性と今後の投資への示唆

投資の世界では、ホームカントリーバイアスという言葉がある。これは自国への投資ウェイトが世界の株式市場における「市場別時価総額ウエイト」に比べて大きいということを指す。しかも恒常的という意味を含んでいる。バイアスがある背景には、まずは自国市場への投資という考えがあろうし、歴史的にも海外投資には通貨変動の問題もあるため、心理的壁も高かった。しかしながら、90年代以降、日本の株式市場の低迷によって、機関投資家のみならず個人投資家、特に投資信託を利用している投資家は2000年代に入り、ホームカントリーバイアスの考えは薄れ、国際分散投資は日常的なものとなった。

一方、海外投資の中身において、地域的偏り、つまり地域バイアスは存在するようである。今回は、日本の投信が海外株式投資に対して、どのような配分上の特性を有しているかを示し、今後の投資への示唆を引き出してみたい。

地域バイアスの特性

図1に、公募投信における株式の外貨建て純資産の通貨別構成比の推移を示した。

図1 外貨建て株式(純資産)の通貨別構成比の推移

unome_takanome33_1.gif

【図について】
期間は、2003年11月末から2013年12月末まで。
構成比は外貨建て株式(純資産)全体を100%とした場合の地域別比率。
欧州、アジアパシフィックの中には先進国、新興国が含まれる。
アジアパシフィックは、香港・中国、インド、ASEAN5等を含み、日本を除く。

【出所】
投資信託協会HPより野村アセットマネジメント作成

 

図をみて気づくのは、米国とアジアパシフィックが相対的に高い一方で欧州のウェイトは低いことである。これは「株式市場別の時価総額ウエイト」と大きく異なっている。株式市場では米国が50%以上を占め、次いで欧州、そしてアジアパシフィックといった順になる。

また、ここで定義したアジアパシフィックは新興国を含んでおり、2000年代以降のBRICsのブームもあって、香港+中国、インドのウェイトが次々に上昇している。そしてASEAN5(ASEAN発足当初の加盟国であるタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5ヵ国)も遅れてウェイトが上昇した。その後、ASEAN5はインドを抜いて、香港+中国に肉薄している。

一方、米国も2012年末にはアジア全体のウェイトを凌駕した。それでも「株式市場別の時価総額ウエイト」と比べて、アジアがオーバーウェイト、米欧がアンダーウェイトであることに変わりなく、特に欧州はリーマン・ショック後のPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)問題もあり、人気は低迷している。このように「地域別バイアス」がはっきりと現れているのが確認できよう。

地域バイアスによる効果と示すもの

ではそうした配分に効果があったのかについて簡単に検証を行ってみよう。図2は「長期」(2003年11月末~2013年12月末)及び「短期」(2012年10月末~2013年12月末)の地域別株式市場の累積リターン(円換算ベース)である。

図2 地域別株式市場の累積リターン

unome_takanome33_2.gif

【図について】
期間は、2003年11月末から2013年12月末までと、2012年10月末から2013年12月末まで。

【使用した指数等】
各地域の累積リターン:各地域のMSCI指数(円換算ベース)

【出所】
MSCI、WMロイターデータをFactSet等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

まず「長期」でみると、最も高いリターンは新興国、次いでアジアパシフィック、欧州、米国、日本の順である。図1におけるウェイトをみると、米国、アジアパシフィック、欧州の順であり、このウェイトの組合せだと高いリターンを挙げたと思われる。

一方、「短期」でみると、アベノミクス相場を反映して日本が最も高く、次いで米国、欧州で、アジアパシフィックや新興国のリターンは冴えなかった。この場合、欧州のアンダーウェイトやアジアパシフィックのオーバーウェイトは効果的なパフォーマンスにつながっていないと考えられる。

従って、外国株式投資を考える場合、この地域バイアスの扱いがポイントとなる。これらの地域バイアスは、ある時点での期待リターンのイメージがそのまま続いていることで生じているものと思われる。
また、情報収集の容易さから、マクロ経済に偏ったイメージが残りやすい。図3には、ミクロ経済の代表的な指標である各地域企業のROEの推移を示したが、マクロ経済とは異なった様子がうかがえる。

図3 各地域企業のROE推移

unome_takanome33_3.gif

【図について】
期間は、2003年から2013年まで。各年12月末の値。

【使用した指数等】
各地域企業のROE:各地域のMSCI指数のROE

【出所】
MSCIデータをFactSetより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

日本企業のROEの低さは以前から指摘されるところであるが、海外企業は先進国、新興国共に高い。図1でアンダーウェイトしている欧州も、ROEでみるとリーマン・ショック以降は低下したものの、日本企業よりは高い。このため、図2で見られるように、リターンはさほど低くはないことが理解できる。これは欧州企業の活動が自国の中だけでなく、グローバル化しているためと考えられる。そうなると、情報収集が容易だからと言って、マクロ経済だけに注目した投資判断は不十分であるということになる。常にミクロの視点を忘れないようにすべきである。

投資する投資信託にあった理解と対応が必要

以上のような考察を基にすると、投資信託に投資する際には、次のような点に注意する必要があろう。

投資信託には様々なタイプのものがあり、世界全体の株式に投資するファンドや地域や国に特化したファンドがある。前者においてはインデックス型とアクティブ型がある。インデックス型であれば、地域バイアスとは無縁である。アクティブ型では運用担当者が現時点でどのような考えを有しているかを理解するのが好ましい。一方、地域や国に特化したファンドを利用する場合は、投資信託の投資家が自ら、その投資対象について、今からの期待リターンを多面的に考え、常に情報をリニューアルしていく必要がある。

 

【使用した指数の著作権等】
●MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCI に帰属します。またMSCI は、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。