鵜目鷹目34. 新興国の政治リスクと資産運用

2014年5月12日掲載

新興国の政治リスクと資産運用

2月に起きたウクライナの政変は、新興国投資における政治リスクを改めて実感させるものであった。とは言え、それでもって新興国投資を忌避するのは過剰反応である。株式を中心とした長期の資産運用においては、投資スタンスの軸をぶれないようにするためにも、経済と政治の関係を理解しておくことが大切である。今回は、改めてこの問題について考察していきたい。

ウクライナ、ナイジェリア、日本の株価指数パフォーマンス

足元で話題になっているウクライナとナイジェリアに注目してみたい。

ウクライナは2014年2月23日の政変、その後、クリミア自治共和国の住民投票によるロシア編入決定により、ロシアも編入を表明、各国の反発が生じている。その後もウクライナ東部において武装グループが市議会を占拠、また検問所で銃撃戦が生じるなど、2014年5月25日の大統領選挙をにらんだ動きが続いている(2014年5月1日現在)。
一方、ナイジェリアでは、ジョナサン大統領が2月に、国営企業の収入の不明瞭さを批判したサヌシ中銀総裁を事実上解任する事件があり、その結果、通貨の下落が生じた。図1にウクライナ、ナイジェリア、日本の株価指数の長期のパフォーマンスを示した。

図1 ウクライナ、ナイジェリア、日本の株価指数パフォーマンス推移

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【図について】
期間は、1998年1月末から2014年3月末まで。1998年1月末を100として指数化。

【使用した指数等】
ウクライナ:S&P UKRAINE BMI指数、ナイジェリア:S&P NIGERIA BMI指数、日本:TOPIX

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シーのデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

現地通貨ベースでみると、ナイジェリア株、ウクライナ株はともに日本株に比べてパフォーマンスが高い。一方で、円ベースでみると、ナイジェリア株のパフォーマンスは高いものの、ウクライナ株のパフォーマンスは、足元でみればさほど変わりがない。

ウクライナ(フリヴニャ)、ナイジェリア(ナイラ)、日本円の推移

次に通貨動向を確認しておきたい。

図2 ウクライナ(フリヴニャ)、ナイジェリア(ナイラ)、日本円の推移

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【図について】
期間は、1998年1月末から2014年3月末まで。

【出所】
WMロイター等のデータをトムソン・ロイター等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

円/フリヴニャ(ウクライナ通貨)、円/ナイラ(ナイジェリア通貨)ともに大きく下落している。
一方、円/ドルは、長らく円高傾向にあったとは言え、その変化は比較的緩やかである。従って、ナイラ、フリヴニャともに対ドルで大きく下落している。これが図1の円ベースと現地通貨ベースの違いの主因である。

マクロ経済の成長

次に、これらの背景をマクロ経済の成長で解釈してみよう。図3に実質GDPを指数化したものを示した。

図3 実質GDPの指数化

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【図について】
期間は、1994年から2015年まで(ウクライナのみ2013年まで)。1994年を100として指数化。
2013年(ナイジェリアのみ2012年)以降の実質GDP成長率は、IMFの予測値を使用。
2014年4月6日にナイジェリア政府はGDPの見直しを発表し、従来の1990年基準から2010年基準にするとした。
基準の見直しにより、サービス産業等のカバレッジが拡大した結果、従来2013年の名目GDPが2,920億ドルから5,100億ドルへ変更となった。
当図の元データである4月発表時点でのIMFの数字には反映されていない。

【出所】
IMFのデータより野村アセットマネジメントが作成

 

これによると、ナイジェリアは2000年代に入り、主な輸出品である石油の価格上昇もあって順調に成長し、リーマン・ショック後も順調に成長している。一方、ウクライナはソ連からの独立後、ハイパーインフレに見舞われ、経済は低迷した。1999年以降は順調に成長したものの、リーマン・ショック以降は回復が遅れた。結果的に、日本とさほど変わりない。また、図示はしていないが経常収支の対GDP比でみると、ナイジェリアは2004年以降、プラスが続いているのに対して、ウクライナは2006年以降マイナスの状態が続いている。こうしたことから、株式のパフォーマンスにとって、長期的には経済成長が重要であることが理解できる。

ところで新興国やフロンティア諸国の特徴は株式市場規模が経済規模に比べて小さいのが特徴である。
図4に名目GDPに対する時価総額の大きさの平均比率を示した。

図4 名目GDPに対する時価総額の比率

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【図について】
時価総額(浮動株調整後)は、2013年12月末。名目GDPは2013年。
時価総額(浮動株調整後)、名目GDPは、MSCI指数構成国の単純平均。
2014年4月6日にナイジェリア政府はGDPの見直しを発表し、従来の1990年基準から2010年基準にするとした。
基準の見直しにより、サービス産業等のカバレッジが拡大した結果、従来2013年の名目GDPが2,920億ドルから5,100億ドルへ変更となったが、当図は変更前ベース。

【出所】
MSCI、IMF等のデータをトムソン・ロイター、FactSet等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

先進国は50%強、新興国は20%強、フロンティア諸国は5%弱である。この指標は、短期的には株価の割安性を表す株価収益倍率(PER)の代理指標としてみることもできる。一方、長期的には資本市場の発展段階を表すと解釈もできる。つまりフロンティア諸国や新興国は株式市場経済の歴史自体が浅いため、この比率が低い。日本においても、東証一部を対象(浮動株調整前)でみると、1950年代は10%前後、60~70年代は平均すれば20%台であり、80年代半ばごろより安定して50%台を超えるようになった。
一方、市場経済の代表である米国や英国は100%を超えている。つまり、GDPの規模に比べて、市場経済の規模が大きいと政治変動リスクの影響は比較的小さいと見られる。勿論、新興国やフロンティア諸国では、エネルギー、通信、運輸、金融等といった業種に偏りがあり、もともと政策の影響を受けやすい。その場合、保護政策や各種の規制等の変化に留意が必要である。

長期の資産運用にとっての新興国の政治リスク

長期の資産運用にとって、新興国の政治リスクの問題は、長期的にみた企業活動や経済全体の成長にどのように影響を与えるかということである。

市場規模が小さいと、短期的に通貨も含めて影響が出てくることがあろう。ただ企業活動や経済全体の成長に影響が少なければ、むしろ買い場を与える。この点で、単一国投資の場合にはより注意を払う必要がある。一方、インデックス投資のように幅広く分散されたものであれば、個別の国の問題は薄まるものの、問題の大きさによっては各国への波及を考慮すべきこともある。ETFや先物市場の発展により、全体として売り込まれる場合があるからである。投資対象の分散度合いによって、捉え方や取りうる手段は様々であるが、原点を忘れず対処したい。

 

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