鵜目鷹目35. 積立とリターンの関係

2014年6月6日掲載

継続して投資する際に生じる問題点について

長期間の資産運用では、どのような資産に投資するかでパフォーマンスは大きく変わる。また、どのような方法で投資を行うかも、パフォーマンスに影響を与える。たとえば、個人投資家の多くは勤労者であり、毎月の給与から投資、または、貯蓄するという行動を取ることが多い(以下、投資と表現)。そのため、継続して投資する際に生じる問題点を把握しておく必要がある。今回は簡単なモデルを用いて、そのポイントを整理しておきたい。

以下では、投資方法として、4つの場合を想定する。すなわち、A:一度に全額を投資する場合、B:同じ金額を積み立てる場合、C:積立額を増やす場合、D:積立額を減らす場合、の4つの場合を想定し、パフォーマンスにどのような影響を与えるか?を考えてみたい。また、投資タイミングは計3回(「3期間モデル」)で考える。投資金額は合計で300万円。簡単にするため割引率(市場金利)はゼロとする。3期間別のリターンは、ばらつきが小さい+3%、+5%、+7%のケースと、ばらつきが大きい-5%、+5%、+15%の2つケースを考える。

(1)リターンが+3%、+5%、+7%のケース

図1に結果を示した。①と②は「投資開始時点で300万円を投資、それ以降は追加投資をしない」ケース。③と④は「各期の初めに100万円ずつ投資する」ケース。⑤と⑥は「同じく50万円、100万円、150万円と投資額が増えていく」ケース。⑦と⑧は「逆に150万円、100万円、50万円と投資額が減っていく」ケースである。

図1 リターンのばらつきが小さいケース

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【図について】
最下段の評価額比率とは、第3期末時点の評価額の比率で、左から①/②、③/④、⑤/⑥、⑦/⑧。

【出所】
野村アセットマネジメントが作成

 

最終的に第3期末時点での評価額が大きいのは、最初に一度に投資する①と②である。この場合、期間別のリターンの順番が違っても、3期間を通じたトータル・リターンは同じなので、最終的には同じ評価額となる。

それに対して、追加投資がある③~⑧をみると、期間別のリターンの順番が変わると第3期末の評価額も変化していく。しかも積立額を減らす⑦や⑧が、同額積立てる③や④、積立額を増やす⑤や⑥より、第3期末の評価額が大きいという結果となっている。

この追加投資がある③~⑧のケースを具体的な状況に例えるなら、たとえば以下のようになろう。

積立額を増やす⑤と⑥のケースは、一般勤労者の賃金カーブの上昇につれて投資額が増えていくパターン。
積立額を減らす⑦と⑧のケースは、相続財産はあるものの、自身の賃金が余り増えないパターン。
なお、期初に一度に投資する①と②は、徐々に積立額を減らす⑦と⑧を更に極端にしたケース(積立額がゼロのケース)で、相続資産は大きいがその後の投資がなされないケースと読み替えることが出来よう。

次に、期間別のリターンの順番で生じる格差に注目してみよう。図1の最下段に評価額比率を示した。積立額を増やす⑤/⑥のケースが1.032と最も大きく、逆に積立額を減らす⑦/⑧の比率が1.019と最も小さい。つまり、積立額を増やす⑤と⑥では第3期末時点でのリターンで大きな違いが出やすくなる。

実は、次にみるリターンのばらつきがさらに大きい場合で、それらの傾向が顕著となる。

(2)リターンが-5%、+5%、+15%のケース

ここでは期によってさらにリターンのばらつきが大きいパターンを与える。結果を図2に示した。

図2 リターンのばらつきが大きいケース

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【図について】
最下段の評価額比率とは、第3期末時点の評価額の比率で、左から①/②、③/④、⑤/⑥、⑦/⑧。

【出所】
野村アセットマネジメントが作成

 

第3期末時点で最も評価額が大きかったのは⑤であった。これは当初300万円を投資した①や②のケースよりも高い。第1期のリターンがマイナスであったため、投資額の大きい①と②がその影響を受けたためと考えられる。逆に、⑥のように最後のリターンが悪いと追加投資額の目減りが大きく影響して、最終的なパフォーマンスが悪化してしまうこともある。
このことから、株式のようなリターン変動が大きい投資対象でも、投資タイミングが適切ならば、大きな収益を獲得することができる可能性があるとも言えよう。

また評価額比率をみると、上記ケース(1)の場合と同様に、積立額を増やすケース(⑤と⑥)が1.170と最も格差がつき、積立額を減らすケース(⑦と⑧)の格差が最も小さい。そして、ここでも一度に投資するケースでは、各期でのリターンの順番に無関係である。

リターン分布の違いについて

ところで期間別のリターンの分布の違いについて補足しておこう。

一般に分布を考える際には「平均リターン」を用いることが多いが、「平均リターン」を求める方法は、おもに2つ(算術平均と幾何平均)ある。

「算術平均」とは、単純リターンのことで、具体的には「第1期リターン」「第2期リターン」「第3期リターン」を足して3で割った値である。今回考えたケース(1)およびケース(2)の場合、平均リターンはすべて5%となる(図3)。

一方、「幾何平均」とは、経済成長率の計算などで利用されている平均であり、全期間を通じて見た実質的な平均リターンを表す。一般に、ばらつきが大きいと、この値は小さくなる。
実際、ばらつきが大きいケース(2)の実質的な平均リターンは4.7%で、ばらつきが小さいケース(1)の5%よりも小さくなる(図3)。

図3 リターンパターンと幾何平均

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

このように、リターンの順番は全体のリターンに影響を与えないが、リターンのばらつきが大きいほど幾何平均は小さくなる。図1と2における①と②をみると、同じく「一度に投資する」場合でも、ばらつきが小さい図1の方が最終的な評価額は大きい。このリターン変動の違いが長期の累積リターンに影響をもたらすわけである。

最後にかけての資産配分に留意

最後に、以上の単純なモデルを用いた考察から、投資を行う際の示唆を導いておこう。

長期間の資産運用では、株式のような投資対象の将来リターンを予測することは、もちろん重要である。

さらに、これまでに述べたよう、積立額を増やす投資家にとっては、最後にかけてのリターンが最終的なパフォーマンス結果に大きな影響を与えるので、最後にかけての資産配分に十分留意すべきである。

「年齢が上がるにつれて株式のようなリスク資産を減らすのが良い」という投資アドバイスを耳にすることがあるが、その背景には、こうした理由があるのである。

しかし実態としては、年齢層別の保有資産の内訳をみると、リスク資産比率が年齢の上昇ともに上がっていく傾向がある。つまり結果に格差が生じやすい。投資による資産形成をどのような方法で行うかは人それぞれであるが、これらの基本に留意しておくことが大切である。