鵜目鷹目36. 株式のボラティリティの低下

2014年7月18日掲載

株式のボラティリティ低下から考える今後の資産運用

最近、米国および欧州株式市場のボラティリティ低下が目立つ。背景としては、リーマン・ショック以降の各国の金融緩和政策がプラスに働き、経済全体の安定化がみられるためである。今回は、その状況を確認した上で今後の資産運用における示唆を導いてみたい。

株式ボラティリティの状況

図1に日本株(円ベース)、米国株(ドルベース)、欧州株(ユーロベース)及び円/ドル、円/ユーロのボラティリティ推移を示した。

図1 ボラティリティの推移

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【図について】
各時点におけるリスクは、その時点における過去2年間(24ヶ月)の月次リターンの値を用いて計算、グラフ表示期間は2001年1月末から2014年5月末まで。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX、米国株:S&P500、欧州株:MSCI Europe

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、WMロイター、短資協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

これをみてわかるのは、リーマン・ショックで日米欧州株式のボラティリティは上昇したものの、米国、欧州は2010年から低下傾向が続いていることである。また、米国株のボラティリティは円/ドルのボラティリティに足元接近している。また欧州株に至っては、2012年以降は、株式の方が円/ユーロのボラティリティより低い状態が続いている。これは国際分散投資を考える上で驚くべきことである。何故なら、キャッシュフローを生まない為替のボラティリティが株式のボラティリティに比べて、大きいということは、投資効率低下の可能性が考えられるからである。そこで図2に投資効率を示す指標のシャープ・レシオの推移を示した。

図2 投資効率(シャープ・レシオ)の推移

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【図について】
投資効率(シャープ・レシオ)=(リターン-円短期金利)÷リスク、各時点におけるリターンおよびリスク(過去2年間(24ヶ月)の値)を用いて計算、グラフ表示期間は2001年1月末から2014年5月末まで。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX、米国株:S&P500、欧州株:MSCI Europe

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、WMロイター、短資協会、BBA等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

投資効率(シャープ・レシオ)の状況

実は上で述べた想定とは逆に、足元では2004~2007年と同様にシャープ・レシオの水準は高い状態になっている。それは、円ベース、ヘッジベース共にである。図1にみるように、足元のボラティリティ低下がリスクの低下となり、結果としてシャープ・レシオの上昇を支えていることは言うまでもない。言い換えると各々の株式市場がボラティリティの低下を伴って上昇していることを示している。日本の場合は図1でみたようにボラティリティは高止まりしているが、アベノミクスへの期待による株式市場の上昇自体でシャープ・レシオを押し上げている。

話を欧米株に戻そう。特に米欧株(円ベース)のシャープ・レシオの上昇は、為替のシャープ・レシオの上昇も寄与している。図3に為替のシャープ・レシオ推移を示した。

図3 為替の投資効率(シャープ・レシオ)の推移

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【図について】
投資効率(シャープ・レシオ)=(リターン-円短期金利)÷リスク、各時点におけるリターンおよびリスク(過去2年間(24ヶ月)の値)を用いて計算、グラフ表示期間は2001年1月末から2014年5月末まで。

【出所】
WMロイター、短資協会等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

足元では為替のシャープ・レシオが上昇している。やはり、金融緩和による円安が為替ヘッジなしベースへのシャープ・レシオ上昇に寄与していると考えられる。2000年代半ばは、日銀の金融緩和が2006年3月に終了したものの、海外金利が高かったことで円からみてドル高は2007年6月まで、ユーロ高は2008年7月まで続く。このため、その頃まで為替のシャープ・レシオの高止まりが続いている。今回は、リーマン・ショック後の日米欧の金融緩和が順繰りに行われていることで、足元においては円安傾向が続いている。

投資効率(シャープ・レシオ)の上昇の背景と今後の資産運用

以上をまとめ、資産運用上の示唆を導いてみたい。

足元のシャープ・レシオの上昇は、株式要因(ボラティリティ低下、欧米株式の上昇)、為替要因(ボラティリティの低下、円安)が重なったためと言える。結果的に2000年代半ばの水準に達している。欧州も景気回復はまだまだであるものの、2011~12年の危機状態から徐々に脱してきていることもボラティリティの低下につながっている。南欧諸国の国債金利の低下も著しい。また、図では扱っていないが日本株も日次でみたボラティリティは低下傾向を示している。つまり、2000年代半ばにシャープ・レシオの高止まりが数年続いた状態が繰り返されるかもしれない。

日米欧の経済・金融政策の方向は一致しており、物価上昇率が収斂することで、購買力平価の観点からみれば円の独歩高は考えにくい。一方で、米国を先頭に金融緩和政策の出口議論が模索されている。エマージング債やハイ・イールド債のスプレッドは低下、英国等では不動産の上昇がみられ、バブルではないかという議論も始まっている。更にシリアやイラクではISISが台頭してきており、地政学的リスクが生じていることは見逃せない。

図1にあるように足元では株式ボラティリティが為替ボラティリティの水準に接近もしくは割り込んできている。今後、株式ボラティリティが上昇することを考えた場合、2007年後半以降に生じた株式、為替ボラティリティの同時上昇が参考になろう。その意味で為替ヘッジなしのボラティリティ低下に過度に偏りすぎない方が好ましい。為替ヘッジコストは当時と比べて低いので、為替ヘッジあり/なしの適度な組み合わせが肝要だろう。

 

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