鵜目鷹目37. 資本の成長と賃金

2014年8月22日掲載

資産運用における資本の取り込みの重要性

勤労世代の家計は、働いて賃金を得て、支出を除いた部分を貯蓄に回す。それは老後や子供の教育資金、病気への備え等のためである。賃金上昇率が高ければ同じ配分で貯蓄に回すと貯蓄総量は大きくなる。また、ある程度貯蓄総量が大きくなると何で運用するかでそれ自体が生み出す収益が大きく変わる。

資産運用を考える上で、株式や債券にどの程度配分するかでパフォーマンスの多くが決まるという資産配分の問題があるが、今回は更にその川上にある株式のリターンの源泉である資本の成長と、そもそも家計が得る賃金の上昇の関係について整理しておきたい。これにより、家計の資産運用においても資本の取り込みの重要性が理解できよう。

日米の資本成長と賃金

まず、図1に日本企業のROE、賃金上昇率、消費者物価上昇率の推移を示した。

図1 日本企業のROE、賃金上昇率、消費者物価上昇率の推移

unome_takanome37_1.gif

【図について】
期間は、1980年度から2012年度まで。
財務省・法人企業統計年報に基づく全産業のROE(=当期純利益/[(前期純資産+当期純資産)/2]×100)。
賃金上昇率は、当統計の全産業の人件費合計の上昇率、および厚生労働省の毎月勤労統計による30人以上の現金給与総額の上昇率。

【出所】
財務省等のデータを野村総合研究所Super Focusより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

ROEは株式リターンの元になる資本の収益性を示す指標である。図によれば、ROEが賃金上昇率や物価上昇率に比べて高い傾向にある。1990年代に入り、ROEの低下が顕著になるが、2000年代に入ると復活傾向にある。また、2000年代では賃金上昇率が物価上昇率より低い場合もあり、家計が苦しくなっていたことがわかる。

一方、株式のリターンは、短期的には人気に左右され、資本の収益性から乖離することもあるが、長期的には一定の前提下ではそこに収斂する。従って、株式投資は、この資本の成長に着目しているということになる。

勿論、資産運用は株式や債券他の組み合わせを持って行うことが多いので、株式以外の債券等の配分次第でROEの重みは薄まるが、株式投資の部分は、賃金上昇率を上回っていくことが期待されているということである。

次に、米国の状況を確認しておきたい。

図2 米国企業のROE、賃金上昇率、消費者物価上昇率の推移

unome_takanome37_2.gif

【図について】
期間は、2003年から2013年まで。

【出所】
MSCI、米国商務省、米国労働省等のデータを野村総合研究所Super Focus等より取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

米国も日本と同様にROEが賃金上昇率や消費者物価上昇率に比べて高いことが確認できる。しかも2003年以降、米国のROEは日本と比べて常に大きい。

また、図3に日米の株式リターン、ROE、賃金上昇率、消費者物価上昇率をまとめてみた。日米共に株式リターン、ROEが賃金上昇率、消費者物価上昇率に比べて高いことが確認できる。

図3 日米の株式リターン、ROE、賃金上昇率、消費者物価上昇率の比較

unome_takanome37_3.gif

【図について】
計算期間は、2002年12月~2013年12月。

【使用した指数等】
株式リターン:TOPIX(日本)、S&P500(米国)。
ROE:MSCI Japan(日本)、MSCI USA(米国)。

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイターより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

以上のように、資産運用で、特に株式投資は、資本の成長が重要であることが理解できよう。特定の企業への投資であれば、投資先企業のROEが重要であるし、株式投信のように分散された投資であれば、分散されたポートフォリオ全体のROEが重要である。

資本成長(ROE)を直接取り込んでいくことが重要

直近で、公的年金の経済前提および運用利回りの検討の中で、賃金上昇率を1.7%ポイント上回る目標利回りが発表された。これは前回の1.6%を上回っており、株式比率の引き上げの議論を後押しするものになっている。翻って、家計においても長寿化により、戦略的・計画的に資産運用を活用することがますます重要になっていく。言い換えると、今後の資産運用で大切なのは、資本の成長(ROE)を如何に直接取り込んでいくかということである。運用の効果は、株式への投資割合と株式への投資期間の長さが重要である。また、ROEの変動に比べて、株式のリターンの変動は大きい。従って、時間分散をしながら早めに取り組むことが肝要である。

 

【使用した指数の著作権等】
●東証株価指数(TOPIX)は、株式会社東京証券取引所((株)東京証券取引所)の知的財産であり、指数の算出、指数値の公表、利用など同指数に関するすべての権利は、(株)東京証券取引所が有しています。なお、本商品は、(株)東京証券取引所により提供、保証又は販売されるものではなく、(株)東京証券取引所は、ファンドの発行又は売買に起因するいかなる損害に対しても、責任を有しません。
●MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
●「S&P500株価指数」はスタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シーの所有する登録商標であり、野村アセットマネジメントに対して利用許諾が与えられています。スタンダード&プアーズは本商品を推奨・支持・販売・促進等するものではなく、また本商品に対する投資適格性等に関しいかなる意思表明等を行なうものではありません。