鵜目鷹目38. 時間分散とファンド選択

2014年10月3日掲載

時間分散とファンド選択

資産運用の解説の冒頭に、時間分散の大切さを訴えるものが多い。実際、その通りだが、世の中は動いており、色んなファンドが出てくれば目移りすることも事実である。目移りするというのは、期待リターンが高いのではないかと思わせる、より魅力的なファンドが出てくるとも言い換えられる。ところが、本コーナーの第31回で見たように、逆張りで投資することで、ファンドのパフォーマンスを超えることが出来ることを示した。今回も、時間分散の基本であるドルコスト平均法を用いて、ファンドのパフォーマンスを超えることが可能であることを示してみたい。

時間分散シミュレーション

3つのファンドがあるとして、このファンドをドルコスト平均法で購入していくことを考えてみたい。ドルコスト平均法は、定期的に定額で買い付ける投資手法である。比較的少額資金で、時間をかけて資産形成をする際に利用することが多い。

図1に3つのファンドの基準価額推移を示した。時点10においては、ファンド①の基準価額が最も高く、次いでファンド②、ファンド③の順とする。注意しておきたいのはファンド③の基準価額は期初の時点ゼロより低いということである。

図1 各ファンドの基準価額推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

次に、時点ゼロより、それぞれのファンドを時点ごとに3万円ずつ購入するとして、時点10(この時点でも買い付けるとする)での評価損益の推移を計算してみたのが図2である。

図2 3つのファンドに投資した時の評価損益

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

時点10において、基準価額はファンド③が低いにも関わらず、評価損益はファンド③に投資した方が最も評価益が出ている。そこで、このからくりを解明していこう。評価損益は以下のように表すことが出来る。

評価損益=累積購入口数×(時価-簿価)

つまり、長方形で言えば、縦(累積購入口数)と、横(時価-簿価)の掛け算であらわされる面積ということである。ファンド③への投資が最も評価益が多かった背景には、図3に示したように、(長方形の縦の長さである)累積購入口数が最も大きかったためである。

図3 累積購入口数と基準価額差(時価-簿価)

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

投資は、出来るだけ値上がりするものに投資したいと思うものであるが、ドルコスト平均法では、基準価額が値上がりすることのみならず、累積購入口数が重要になる。つまり、単に右肩上がりのファンドに投資をするだけではなく、投資家サイドの投資行動にも工夫の余地があるということである。右肩上がりのファンドに累積投資するということは、簿価も上昇していく。簿価の動きは時間が経過するにつれて、鈍くなる。従って、時価と簿価の差も大きくなると期待される。上の例では、時点10において、ファンド①の基準価額は15,000、ファンド②は12,500、ファンド③は9,500であり、時価自体は相当な差になっているが、図3でみるように、時価と簿価の差はファンド③に比べて、取り立てて大きいという訳ではない。むしろファンド③に投資した方が累積購入口数は圧倒的に多くなっている。それは図1でみるように時点1でファンド③は半値に下がり、その後回復しているために、その時期に購入口数が増えたわけである。

ドルコスト平均法は、定期的に同じ金額を買い付ける方法を指すが、上の評価損益式をみると、その応用範囲は広い。下がった時に更に買い足せば簿価は下がるし、購入口数も増える。特に簿価の変動は投資して間もない方が大きい。本ケースのように投資を開始して下落した場合の行動で真価を試される。

なお、今回のケースではわかりやすくするために、基準価額は一定の額で上昇という前提を置いた。定額上昇だと、より下がった方の戻りのリターンは高くなる。従って、本質的には戻りの率の大きさに依存するとも言える。逆に言えば、当初の下落がファンダメンタルに対して行き過ぎているということでもある。

図4にファンドAは5%で上昇、ファンドBは時点1で50%下落、その後5%で回復、ファンドCは時点1で50%下落、その後7%で回復した時の評価損益を示した。ファンドBの戻りはファンドAと同じ5%で回復しているがその場合は評価損益の逆転は起きない。一方でファンドCのようにファンドAを上回る7%で戻していけば、評価損益の逆転は起きる。ファンダメンタルに差がなく、一時的に下落したものであればその後戻りは大きく、故に逆張る価値はあるが、戻りが同じということであれば、その基準価額の変化は下落の段階で結果的にファンダメンタルに差が生じたということでもあろう。

図4 評価損益の推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

投資行動によって結果は大きく変化

いずれにせよ、少額資金からの資産形成には時間がかかる分だけ根気が必要である。よりよいファンドの選択はいうまでもないが、自分自身の投資行動次第で結果は大きく変わる。今回見たように、少しの逆張りを行って、時間分散投資することが出来れば、その有効性は更に増すだろう。