鵜目鷹目39. 銘柄分散とドルコスト平均法

2014年11月14日掲載

分散効果の理解を深める

銘柄分散を解説する資料で、単純な図を用いて、逆に動くものを組み合わせると、打ち消しあって安定した動きになりますというのを見かけることがある。理屈は正しいが、そのようなものがあるのだろうかと疑問になることがあるだろう。相関係数は-1から1の間にあるわけだが、実際計測してみると、完全な逆相関である-1になることはまずない。しかも、チャートをみると、価格の上げ下げが対称的ということもまずない。いろんなパターンがある。今回は、そうした実際の現象を踏まえ、再度分散の意義を考えてみたい。その上で、ドルコスト平均法という時間分散効果を重ねて立体的な理解を深めたい。

銘柄分散をシミュレーション

まず、銘柄分散を考えてみたい。様々な現象の中で、上げ期間が短いが上げ具合は鋭角的で下げ期間が長いという波動のパターンを例に見てみよう。

図1に銘柄Aの価格推移を示した。

図1 銘柄Aの価格推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

この例は、基本的には右肩上がりであるが、上げは鋭角的かつ短く、下げは緩やかで長いという特徴を持っている。こうしたパターンは株式の個別銘柄で見かけるものである。

これは投資家の過剰反応によるものである。もともと人の神経は刺激に対して過剰に反応することはよく知られている。例えば、雑誌の漫画は白黒で表現されることが多いが、コントラストの強い絵が印象に残るのは、白い紙の中に黒で表現される境目(エッジ)に関しての神経の過剰反応を利用したものと言える。翻って、株価の動きでそうした過剰な反応がみられるのは、何かの材料(刺激)に対して投資家の過剰な反応がある程度存在するためと思われる。

次に、図2に3銘柄(A~C)が時差をもって同じようなパターンで動く推移を示した。

図2 3銘柄(A~C)の価格推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

そして、この3銘柄(A~C)の平均価格を追加して図3に示した。

図3 3銘柄(A~C)の価格と平均価格の推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

これをみると、平均価格の波動は、右肩上がりを維持しつつ、上げが長く、下げが短い動きに変化している。これが銘柄分散の妙味である。言い換えると、個別では過剰反応を含んだものでも、時差をもって生じるのであれば、相関の低いものとの組み合わせで全体のリスクを引き下げるということに加えて、個別銘柄で生じる投資家の過度な価格反応を制御する要素が加わるということである。

従って、分散ポートフォリオを作るにあたっても、そうした特性の違いを考慮して行うべきだし、更に広げてみれば、市場全体は個別銘柄で生じる過剰な動きのミスプライスを打ち消す要素を有したものと言える。

ドルコスト平均法をシミュレーション

次に、これらに対して定期的に定額で購入するドルコスト平均法を活用するとどうなるだろうか?図4に毎月10,000円ずつ購入していった場合の評価損益の推移を示した。以下では、銘柄A、銘柄B、銘柄C、3銘柄の平均価格で購入したものに加えて、3銘柄を約3,333円(10,000/3)で毎月購入した5つのケースを示した。

図4 ドルコスト平均法による評価損益の推移

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【出所】
野村アセットマネジメントが作成

銘柄A~Cまでは、図2でみられるように、終点では価格は銘柄C、銘柄B、銘柄Aの順位なっているので評価損益はそれに対応した評価損益となる。次に3銘柄の平均価格で購入した場合、終点での価格は、平均価格と銘柄Bで同じであるものの、銘柄Bの評価損益より低いことがわかる。また、平均価格で購入した場合と3銘柄均等で購入した場合では効果が異なり、3銘柄均等で購入した方が高い値となっている。

簿価は銘柄Cが最も低く、次いで銘柄B、平均価格、銘柄Aの順となっているため、累積購入数は逆に銘柄Cが最も多く、ついで銘柄B、平均価格、銘柄Aの順となる。また、3銘柄を均等で購入した場合は、それぞれの価格変動性の大きさの影響を受ける。この点について、本コーナーの第5回で解説したように、ドルコスト平均法は価格の変動性の大きい方が、効果が大きい。図3にあるように、平均価格での購入は、変動性自体が低下したものを購入していることである。一方、個別銘柄で購入するとその銘柄が倒産することもある。平均価格だと、A銘柄が倒産したとしても、残りの平均価格で買い付けるだけなので影響度は低い。このあたりは、選択眼との兼ね合いということになる。

銘柄分散とドルコスト平均法について

以上をまとめておこう。銘柄分散(今回は平均価格)によって、投資家の過剰反応を打ち消すことができる可能性が分かった。これはリスク(価格の変動性)を低下させることの一要素でもある。また、ドルコスト平均法では個別銘柄の変動性の大きさを直接活用できる個別銘柄ごとの買い付けの方が平均価格での買い付けより効果は大きい可能性があることが示された。一見、パッケージ化されたものを定期購入するより、パッケージになる前の個別銘柄を定期購入した方が効果は大きいことに繋がることを想起させる。しかしながら、それは終末での価格の状態や個別銘柄が倒産することもないという条件をどのように考えるかとのバランスである。