鵜目鷹目40. 公的年金に学ぶ資産配分

2014年12月19日掲載

公的年金に学ぶ

日本の公的年金を代表するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ(資産配分比率)が10月31日に公表された。今回は、この資産配分の特性を分析すると共に、家計の資産運用への示唆を導いてみたい。

基本ポートフォリオ

まず、図1にGPIFの基本ポートフォリオの旧と新の資産配分比率をまとめてみた。

図1 GPIFの基本ポートフォリオ

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【出所】
年金積立金管理運用独立行政法人のデータより野村アセットマネジメントが作成

特徴は、内外株式比率および外国債の比率が上昇する一方で日本債の比率が低下したことである。許容幅とは、この範囲であればリバランスをしなくてよいという意味であるが、その幅も外国債を除いて広がった。株式の変動性が大きいので、それによってこまめなリバランスにコストをかかるのを避けるためと思われる。短期資産という資産クラスは無くなった。また、為替に晒されるという意味で外貨(外国株と外国債の合計)は従来の23%から40%に上昇した。なお、表には示していないが、オルタナティブ資産は5%を上限に投資可能となった。各々のオルタナティブは、この4資産のいずれかに配置されるようである。また、外国株のベンチマークも従来はMSCI-KOKUSAIであったのがMSCI-ACWI(除く日本)となった。既に新興国株投資は行っているので驚くものではない。

基本ポートフォリオをシミュレーション

さて、GPIFの個々の資産のベンチマークはカスタマイズされているのもあるので、以下では一般的なベンチマークを使って、旧と新の資産配分で保有した場合のリスク・リターン特性をみていこう。なお、ベンチマークの違いもあるので誤解を招かないように、以下では各々ポートフォリオ1(図1の旧資産配分に対応)、ポートフォリオ2(図1の新資産配分に対応)と表現する。

図2にポートフォリオ1とポートフォリオ2の配分でそれぞれの資産を保有した場合の累積投資収益を示した。また、図3に各資産、ポートフォリオのリターン、リスクを示した。

図2 累積投資収益の推移

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【図について】
計算期間は、1987年12月末~2014年10月末まで。1987年12月末を100として指数化。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
外国株:ポートフォリオ1はMSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)、ポートフォリオ2はMSCI-ACWI(除く日本、円換算ベース)
日本債:NOMURA-BPI総合
外国債:シティ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
短期金利:有担保コール翌日物金利

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、野村證券株式会社、Citigroup Index LLC、短資協会データを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

図3 各資産、ポートフォリオのリターンとリスク

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【図について】
計算期間は、1987年12月末~2014年10月末まで。月次リターンを年率換算。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
日本債:NOMURA-BPI総合
外国株1:MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)
外国株2:MSCI-ACWI(除く日本、円換算ベース)
外国債:シティ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
短期金利:有担保コール翌日物金利

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、Citigroup Index LLC、短資協会データを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

ポートフォリオ2の方が、株式比率は高いため、ポートフォリオ1よりリスクが大きい。株式の上昇相場では、ポートフォリオ2が大きく上昇する一方で、下落相場ではポートフォリオ2の方が大きく下落する。また、計算期間中は日本債のシャープレシオが最も高いので、日本債比率の高いポートフォリオ1のシャープレシオが2より高い点に留意したい。日本債のシャープレシオが高かったのは、言うまでもなくデフレ環境下での金利の低下が長らく続いたためである。今後、金利が上昇していくなら、日本債のシャープレシオの高さは低下していくものと見られる。

局面別パフォーマンス

基本ポートフォリオの資産配分としてどちらを採用するかはリスク許容度次第だが、ポートフォリオ2を採用した場合、景気後退や株式市場の下落時の対応が一つのポイントになる。ちなみに、2007年央からリーマン・ショックを挟んで2009年初めまでの下落はポートフォリオ1が10%台半ばであるのに対して、ポートフォリオ2は30%台半ばである。

また、2000年代半ば以降は、日本株が為替の影響を受けやすくなっている。そこで、図4に為替の変動局面別にみた内外株式とポートフォリオのパフォーマンス状況をまとめてみた。

図4 為替の変動局面別にみたパフォーマンス状況

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【図について】
計算期間は、1987年12月末~2014年10月末まで。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
外国株:MSCI-ACWI(除く日本、円換算ベース)

【出所】
(株)東京証券取引所、野村證券株式会社、MSCI、Citigroup Index LLC、短資協会、WMロイターデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

日本株と円/ドルの相関は2005年までほぼゼロであったものがプラスの方向に大きく上昇している。
一方、外国株は特に変化していない。外国株は外貨分だけ円/ドルの変動の影響を直接受けるが、それを超えて高いパフォーマンスを示している。海外には成長性のチャンスが多いということだろう。

ポートフォリオでみると、2005年以降は共に相関が上昇している。一方、2005年以降の日本株や外国株との相関(ともに0.60)と比べて、さほど大きい訳ではない。分散効果が働いているものと見られる。

家計の資産運用への応用

以上、GPIFの基本ポートフォリオの(資産配分の)変更を例に、家計の資産運用に応用することの留意点を考えてみたい。家計の場合、収入からの追加的貯蓄の有無が、資産配分に影響を与える。基本ポートフォリオにおける株式比率の引き上げは、追加的貯蓄がある場合には、許容しやすい。一方、追加的貯蓄がない、もしくは取り崩しの際は、ダウンサイド・リスクが顕在化すると、ダメージが大きくなる。つまり枯渇リスクが高くなる。その点を踏まえた配分を検討することが望ましいだろう。

また、2000年代半ば以降、日本株と円/ドルの相関が上昇した。ポートフォリオもその影響は受けているものの、ポートフォリオ1と2の影響の違いは見られない。ポートフォリオ2では日本株と外国株の配分を25%ずつとしたが、内外の比率の違いによって為替の影響が異なる可能性がある点に注意したい。日本株と為替の相関が強い一因には大胆な金融緩和政策のパラダイムがあげられよう。その原因がデフレからの脱却だとすれば、ポートフォリオのリスク管理の観点からも、日米欧の金融政策の行方を見守りたい。

 

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