鵜目鷹目42. 資産運用で地域別の成長を超える

2015年3月27日掲載

地域別の特性を踏まえ

日本国内の産業や少子高齢化の度合いは地域によって異なる。つまり、家計の収入は地域の成長度合いによって異なっているとも考えられる。一方、資産運用は、そうしたリアルの活動の地域性とは関係なく、世界の資本市場とつながっている。今回は、地域別の家計の現状を踏まえた上での資産運用のあり方を考えてみたい。

地域特性について

図1に地域別の年間収入(一世帯当たり)を示した。これをみると、関東、北陸、東海地方の収入が高いことがみて取れる。

図1 地域別の年間収入(一世帯当たり)

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【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(2009)のデータより野村アセットマネジメント作成

 

次に、図2に地域別の年間収入に対する貯蓄、金融資産(貯蓄-負債)、実物資産の倍率を示した。

図2 地域別の年間収入に対する貯蓄、金融資産(貯蓄-負債)、実物資産の倍率

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【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(2009)のデータより野村アセットマネジメント作成

 

まず、実物資産は、北海道の倍率が低く、関東は高い。一方で、貯蓄、金融資産については、沖縄の倍率が低い。実物資産は土地価格の地域による違いもあるだろう。一方で、貯蓄と金融資産は概ね平行なので、負債の地域特性が著しく異なることはなさそうだ。最後に、貯蓄の地域特性を見てみよう。図3に、貯蓄の内訳を示してみた。

図3 地域別の貯蓄の内訳

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【図について】
通貨性預貯金とは、普通預金や当座預金などを指します。

【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(2009)のデータより野村アセットマネジメント作成

 

全体の傾向でみると、関東、東海、近畿の有価証券比率が高い。また、東北や九州では、生命保険などの比率が高い。

貯蓄増加率の違いについて

次に貯蓄増加率の違いを説明する共通要素をみておきたい。各都道府県別のデータを用いて重回帰分析を行い、結果を図4に示した。分析に当たり、貯蓄増加率を年収増加率、貯蓄に対する有価証券比率変化および負債比率変化の3つの要因による説明を試みた。

図4 貯蓄増加率の違いの要因

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【図について】
表の上段は、47都道府県データを標本とした重回帰分析による回帰係数および決定係数。下段はt値。
貯蓄増加率、年収増加率は、全国消費実態調査における平成11年~21年にかけての各増加率を年率換算。
貯蓄に対する有価証券比率変化、負債比率変化も同様に平成11年~21年にかけての変化幅とした(こちらは年率換算はしていない)。
その他の要因は、回帰分析の切片。

【出所】
厚生労働省・全国消費実態調査(1999・2009)のデータより野村アセットマネジメント作成

 

この3つの説明要因で、貯蓄増加率が半分弱説明され(決定係数=0.440)、各変数の説明力は有意である(3つの説明要因のt値の絶対値が2以上)。

年収増加率が1%ポイント高いところほど、貯蓄増加率は0.4%高く、貯蓄に対する有価証券比率が1%ポイント増えたところの貯蓄増加率は0.1%高くなった。また、貯蓄に対する負債比率が1%ポイント増えたところは、貯蓄増加率は0.07%低下したことを意味している。

これは、直感的にわかりやすい。つまり、年収増加率が高ければ、消費性向が同じならば貯蓄の増加率は高くなる。

また、預貯金より期待リターンの高い有価証券の比率が増えれば、そこからの寄与も増える。一方で、負債比率が増えれば、貯蓄を増やすより、負債を減らす方に重きを置くため貯蓄が抑制されるのだろう。

年収増加率は、地域の成長力にも関係するので家計でのコントロールは難しいが、有価証券比率や負債比率は家計でも十分にコントロールできる。

累積効果で地域別の成長を超える

有価証券比率の引き上げは、単に株式投資を増やすことを意味するものではない。それは債券でも構わない。預貯金より期待リターンが高ければよい。また、様々な資産に投資する投資信託の活用で、リスクを抑えつつ、リターンをあげていく方法もあるだろう。そして投資信託を活用する際には、積立投資等を行うことで、時間をかけて累積効果を狙うことが肝要である。つまり、有価証券を活用した資産運用によって地域の成長力の差を超えて、世界に繋がるということで、その成長を享受するということである。