第6話「投資に時間をかけたくないならインデックスファンドの積立を」

わかりやすい商品性と低コストが魅力のインデックスファンド。カン・チュンドさん曰く「これから資産形成を始める人はもちろん、まとまった資産がある人にとっても使い勝手のいい商品」。その理由とインデックス投資をする際の注意点を教えてもらいました。

晋陽FPオフィス代表、CFP®(ファイナンシャル・プランナー)
カン・チュンド氏

日本で唯一のインデックス投資アドバイザー(カン・チュンド氏HPから抜粋)。1998年にアメリカのファイナンシャル・プランナーの「資産配分を行おう。インデックス投資を実践しよう」というシンプルな考え方に出会い、感銘を受ける。自身もインデックスファンドやETFを用いて「市場の平均値」に投資を行い、長期保有する戦略を実践。

「日本のビジネスパーソンに、シンプルで継続しやすい資産運用を啓蒙すること」をミッションとして掲げる。笑いを取り入れたエネルギッシュなセミナーに定評がある「落語家FP」でもある。

インデックス投資の手段にはインデックスファンドとETFがある

「市場の平均値」に投資する方法としては、インデックスファンドのほかにETFもありますが、この両者はどう違うのですか?

ETF(上場投資信託)も中身はインデックスファンドそのものです。インデックスファンドが株式市場に上場したもの、いわば上場インデックスファンドと捉えればわかりやすいかもしれません。そのETFは株式と同様ひとつの銘柄として上場しているので、株式市場が開いている間は常に市場価格が動きます。つまり、「いつ買うか」によって買える値段が変わる。そのため、例えば「日経平均株価に連動するETFが1,100円になったら指値注文で買おう」あるいは「今日、成行注文で買おう」と自分で決め、能動的にアクションを起こす必要があります。

これに対して通常のインデックスファンドは、1日に1回、市場が終了したあとに値段が決まります。「今日買おう」と決めても、投資家が購入単価を指定することはできず、購入の申し込みをした後に値段がわかることになります。売るときも同じです。

ETFは取引時間中、常に価格が変動するけれど、インデックスファンドの価格は1日1回しか変わらないのですね。

購入する金額と単位も異なります。ETFは株式市場に上場しているひとつの銘柄ですから、その時の市場価格(株価)×購入単位で購入することになります。仮に1株が1万9,440円なら、1万9,440円で10株、20株といった株数ベースで売買します。「5万円分買う」、「3万円分売る」ということはできません。一方、インデックスファンドは「5万円分買う」や「3万円分売る」など金額ベースでの売買ができます。

分配金の扱いも異なります。ETFは企業の株式と同じで分配金が決算毎に払い出されます。おこづかいとして使うならそれでも構いませんが、資産形成層の場合は分配金を再投資するほうが望ましいです。複利効果が働き、将来より大きなリターンが期待できるからです。その点、インデックスファンドは、「分配金再投資コース」を選ぶと、分配金受け取り後に無手数料で自動的にファンドの買い増しをしてもらえます。これもETFにはない、インデックスファンドならではのメリットです。よって、積立投資がしやすいのはインデックスファンドだと言えるでしょう。金融機関によっては銀行口座からの自動引き落としで積立ができるところもあります。

積立ならインデックスファンド、主人公になって投資をするならETF

ETFとインデックスファンドのどちらを選べばいいかで迷ったら、どう考えればいいでしょうか?

ご自身の特性や性格に適したほうを選ぶといいでしょう。ETFは市場価格をにらみながら自分で買う値段を決め、注文を出す必要があります。つまり、売買のプロセスもDIY志向の人や、自分がドラマの主人公になり、ETFという道具を使って投資という作業をすることに喜びを感じる人は、ETFが向いているかもしれません。

インデックスファンドは「今日買う」や「今日売る」を決めるだけです。積立を利用する場合には、最初に「どのインデックスファンドを毎月いくら積み立てるか」を決めれば、あとは「しくみ」が買ってくれます。仕事やプライベートに忙しく、投資に時間やエネルギーをかけたくない人や効率を重視する人は、インデックスファンドが適しているかもしれません。

いまのお話をうかがうと、インデックスファンドの積立はこれから資産を形成していく若い世代に適していそうですね。

そうとは限りませんよ。たとえば、退職金をもらったシニア層や、相続で現金を引き継いだ熟年層でも活用したい方法です。仮に500万円あったとします。それを一度にまとめて投資することに躊躇する人も多いのではないでしょうか。投信積立のしくみを利用して、5万円ずつ100カ月、10万円ずつ50カ月、あるいは20万円ずつ25カ月など分割して投資をする方法が考えられます。その際、銀行口座からの自動引き落としにすれば、投資家はストレスを感じることも、買うタイミングに迷いを感じることもなく、確実に500万円を投資できるでしょう。

毎年決まった月にメンテナンスを実施、小さな上げ下げは気にしない

前回、DIY型のインデックス運用では、定期的なメンテナンス作業が必要だとうかがいました。どのくらいの頻度で行えばいいでしょうか?

投資を始めたばかりの頃は、どうしても日々の値動きが気になりがちです。しかし、インデックス運用は、世界経済の成長の「のびしろ」を獲得していくことですから、短期的な動きを気にしすぎないことが戦略として非常に重要になります。つまり、投資そのものと程よい距離を保つことが大切です。

ただし、当初の資産配分のままでいると、マーケットの変動等により、イメージと配分割合がズレてしまいます。そこで1年に1回ないしは2回、定期的に元の配分割合に戻す「リバランス」を行います。「1年の総決算の12月」や「自分の誕生月」など行う月を決め、毎年その月に必ず実施します。

リバランスでは、どのような作業を行えばいいのでしょうか。

組入割合が増えたファンドを部分的に解約するともに、組入割合が減ったファンドを買い増して、当初の組入割合に戻します。これは価格が上がって儲かっているファンドを売る一方で、価格が下がっているファンドを買うことになりますので、抵抗を感じるかもしれません。しかし、見方を変えれば、儲かったものを利食い(利益を確定するために売ること)し、価格が下がったものをナンピン買いすること(買い増すこと)と同じであり、「安く買って、高く売ること」という投資の基本を忠実に実践していることに他なりません。

相場が大きく変動した場合などは、メンテナンスの時期ではなくても売買したくなりそうです…。

相場の急変は1年のうちに何度も起きるものです。その都度、メンテナンスをしていたら、購入手数料や信託財産留保額という手数料がかかるファンドの場合、コストがかさんでしまいます。そもそも、インデックス運用や積立は、投資そのものにあまり時間をかけなくて済むことがメリットです。

メンテナンスする必要があるとすれば、ライフステージの変化に合わせて積み立てる金額を増減することでしょうか。たとえば、子どもの進学でお金の支出が増えるようになったから積立額を減らす、転職して収入が増えたら積立額を増やすなどが考えられます。また、長期投資が前提とはいえ、たとえば子どもが大学に入学してお金が必要になったら、積み立ててきたインデックスファンドのなかから100万円分を解約して、入学金や授業料に充てることもできます。

積立を上手に活用すれば、ライフステージにあわせた柔軟な対応もできそうですね。
インデックス運用の奥深さを感じました。どうもありがとうございました。

ポイント

  • ETFは投資の主人公になりたい人、インデックスファンドは時間を効率的に使いたい人に向いている
  • インデックスファンドの積立は、資産形成層はもちろん、まとまった資金のある人にも使い勝手のいい投資の方法
  • 年1回もしくは2回、決まった月にリバランスを実施する

結び

インデックスファンドの積立ならば、「預貯金だけでは心許ないけれど、投資はハードルが高そう」と思っている人でも気軽に始められそうです。また、ETFを使えば機動的なインデックス投資も可能です。そう考えると、インデックス運用は投資のファーストステップとしてだけでなく、投資に慣れた人にも適した間口の広い投資の方法と言えるでしょう。