鵜目鷹目32. やはり、資産配分と国際分散投資

2014年1月24日掲載

資産配分と国際分散投資の重要性を再確認

アベノミクス始動により、2013年の日本の株式市場は50%を超える上昇となった。日本株中心の報道も増えた。しかし、アベノミクスの第一の矢である金融緩和によって生じた「円安」も見逃してはなるまい。今回は、昨年の相場を振り返り、資産運用の基本である資産配分と国際分散投資の重要性を再確認する。

2013年を振り返って

まず、図1に2013年の各資産クラスの円ベースリターンを示した。

図1 2013年の各資産クラスのリターン

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【図について】
期間は、2012年12月末から2013年12月末まで。
最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H、米HY債H)。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
外国株:MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース)
EM株:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
フロンティア株:MSCIフロンティア・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
商品:S&P GSCI商品指数
日本債:NOMURA-BPI総合
外国債H:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM$債H:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジ)
米HY債H:BofA・メリルリンチ・US ハイ・イールド・マスターⅡ・コンストレインド・インデックス(円ヘッジ)
外国債:シティグループ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
EM$債:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース)
EML債:JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、野村證券株式会社、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インク、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

図1より、①株式が債券に比べて優位(EM株を除いて50%以上のリターン)、②債券は為替ヘッジの有り無しで明暗が分かれたことがわかる。

アベノミクスは、大胆な金融緩和、財政政策、成長戦略の組合せと言われる。この中で、株式市場を押し上げたのは、日銀の大胆な金融緩和による「期待」の変化である。こうして日本株は50%以上上昇した。また、緩和の結果、「円安」が進んだことで、海外株も先進国やフロンティア株では円ベースで50%を超え、結果的に日本株とほぼ同等のリターンであった。この中で、EM株は通貨含めて相対的に不調で、円ベースでは20%近いリターンに留まった。

一方、米国の金融緩和縮小報道もあり、米英独等の長期金利はやや上昇傾向だった。このため、円ヘッジした外債HやEM$債Hは、その影響から振るわなかった。それでも為替ヘッジ無しでみれば、円安効果で10%以上のリターンであったことが確認できよう。

戦略的資産配分と戦術的資産配分について

こうした状況をみると、冒頭で触れた日本株中心に注目するのは長い資産運用を行う中では片手落ちである。やはり基本に戻って、資産配分と国際分散投資から考えるべきである。資産配分には、戦略的資産配分と戦術的資産配分がある。前者は、自分のポートフォリオの骨格を決める配分であり、後者は、当面の相場を読んで戦略的配分から乖離させて、特定の資産に傾斜していくことを言う。

例えば、2012年末時点で日本株20%、日本債80%の戦略的資産配分をしている投資家がいるとしよう。途中何もせずバイアンドホールドするとして、上記の2013年のリターンをかけると、2013年末の日本株の配分は27.4%に上昇し、日本債は72.6%の配分に低下する。先日の公的年金(GPIF)の資産配分見直しの議論の際に、日本債のウエイトを引き下げという議論があったが、時価の変動で、既にある程度は達成されたというのは、このことを指すわけである。

今年もこの状況が続くのであれば、更に先回りして、日本株のウエイトを更に引き上げておけば、更にリターンを享受することが出来よう。しかし、本来の20%の配分は、長い目でみた際の自分のリスク回避度を含めた配分である。闇雲に引き上げて、予想外の市場の下落があれば、場合によっては想定外の状況が起きる可能性もある。

実例を挙げてみよう。図2に日本の企業年金の日本株と外国株の平均比率の推移を示した。1997年末の5:3:3:2規制撤廃をうけ、日本株比率が大幅に上昇したものの、2000年初頭のITバブル崩壊を契機に、その後の景気回復、リーマン・ショックを経て、徐々に低下してきた。このことは当初の引き上げが過剰反応であった可能性が否めない。対照的に外国株比率は上昇後、15%から20%で安定し、2012年度末には内外株比率はついに逆転している。

この事象から導かれる教訓は、自国の配分にはホームカントリー・バイアス(自国偏重)という表現があるぐらい、過剰反応を起こしやすい可能性があるということである。

図2 日本の企業年金の日本株及び外国株比率の推移

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【図について】
期間は、1989年度から2012年度まで。

【出所】
企業年金連合会より野村アセットマネジメントが作成

 

実際、図3に示した日米のPERでも、70年代後半から2000年代前半まで日本のPERは米国より高い状況となっていた。つまり、ホームカントリー・バイアスを支える一つの要因として、過大なリターンを期待する高いバリュエーションがあった。ところが、直近において、日米の差は無くなっている。日本株に占める外国人投資家の売買量も増えたことで日本のPERの過大評価が生じにくくなってきている。足元においては、日米に期待リターンの大きなギャップはないということでもある。今後は、企業業績の動向により注意を払うべきである。

図3 日米PERの推移

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【図について】
期間は、1960年から2013年まで。(米国のみ2013年は11月末の値。)

【出所】
(株)東京証券取引所、日本経済新聞社、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー等のデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

国際分散投資のための為替について

次に、国際分散投資を検討する上で重要なのは為替である。為替を動かす要因には様々なものがあるが、基本的に内外のインフレ格差であり、しかもこれはトレンドになりやすい。2000年代に入り、海外は安定したインフレ、日本はデフレが続いたため、円高傾向が続いていた。ところが日銀の金融政策が大きく変わり、インフレ期待も生じている。つまり内外のインフレ格差のトレンドが従来から少し変化し始めた。一方で、米国は金融緩和政策の出口を模索している。長期金利はいち早く反応したが、短期金利がすぐに上昇する状況ではない。欧州はまだ不安定な景気が続く。従って、為替ヘッジコストが低い状態と円安状態の併存が当面は継続する可能性がある。これは2005~2007年半ばの円安局面とは大きく異なる点である。またリーマン・ショック後のように、円高のみが進む状況でも無い。

資産配分、国際分散投資の基本を踏まえた
適正なポートフォリオ構築が可能

以上をまとめておこう。長期の資産運用においては、株式、特に日本株だけに過度な上昇期待を持つのは望ましくない。あくまで、資産配分、国際分散投資の基本を踏まえるべきである。円資産代替とみれば、為替ヘッジを基本として、内外の原資産の比較をすればよい。また、金融政策や物価の状況からみて、為替ヘッジ無しの国際分散投資も、従来以上に意識して利用できる状況が生じている。投信の商品面から言えば、為替ヘッジの有り無しの整備はインデックス型投信でも進んできている。つまり、各々のリスクの許容量に応じて、適正なポートフォリオ構築が可能な環境になってきているということである。

 

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