鵜目鷹目41. 世界が呼んでいる

2015年2月6日掲載

変化する年金の役割

少子高齢化の進展と共に、家計の収入環境は大きく変化している。もともと家計の収入は勤労時には賃金が中心で、退職以後は貯蓄と年金中心に変化する。この年金の部分に関して、公的年金、私的年金の役割が変化しつつある。日本の公的年金は、世代間扶助の仕組みが入っているため、勤労世代と引退世代の割合変化で、掛け金や給付金が変化する。

先般、公的年金運用機関の代表であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が発表した新しい資産配分では、内外の株式比率がそれまでの24%から50%に引き上げられた。運用利回りを引き上げるための施策であるが、世代間扶助の仕組みがある以上、少子高齢化により給付削減は避けられない。そこで、私的年金の役割が大きくなるが、確定給付年金では企業が財務リスクを負担するため、確定拠出年金の方に軸足が移りつつある。先日、厚生労働省が確定拠出年金の加入年齢上限を原則60歳から70歳に引き上げる検討に入ったと報じられたが、それも上記の変化を受けてのことである。確定拠出年金の比重が高まるにつれて、通常の貯蓄の運用と同じで自助努力のウエイトが大きくなるということである。

どのように自助努力すべきか

昨年、フランスの経済学者ピケティ氏の『21世紀の資本』という書物が発刊され、話題を呼んでいる。その中で、長期間のデータに基づいて、各国における資本・所得比率や格差を分析している。色々な示唆はあるが、家計の自助努力という点でも示唆深い。例えば、労働所得の格差以上に資産格差が大きいという点である。

格差が大きい背景には様々な原因があるが、以下では、それを嘆くというより、どのように自助努力すべきかについて検討してみたい。既に答えは、本コーナーの第37回で触れている。つまり、資本の成長を取り込む、言い換えれば株式投資をするということである。一般的に、株主資本利益率(ROE)は賃金上昇率より高い。株主資本利益率は日本よりも米国等海外の方が高い。よって、国際分散投資をするということである。

また、富裕層には企業家が多い。資産の内訳としては、自社株のウエイトが高い。一方で、勤労者は持ち家等のウエイトが高い。富裕層には自社株を通じて、資本の成長を取り込む仕組みが入っている訳である。一般の勤労者も、富裕層の自社株保有の意義をより一般化して、日本株を保有する、更に国際分散投資を意識して世界の株式を保有すると読み替えれば、資本の成長を取り込むことができる。

勿論、株式投資には価格変動(リスク)がつきものなので、そのリスク量を制御するために、株式と債券等のウエイトを決める「資産配分」が大切である。冒頭で触れたGPIFは内外株式の比率を50%としたが、そうしたものを参考するのも一考である。

主要な資産のリターン

図1に昨年(2014年)の主要な資産のリターンを示した。

図1 主要な資産の2014年のリターン

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【図について】
計算期間は、2013年12月末~2014年12月末まで。
最後にHがつくのは為替ヘッジ(外国債H、EM$債H、米HY債H)。
円/ユーロのリターンは+0.17%のため、棒グラフが見えにくくなっております。

【使用した指数等】
日本株:TOPIX(配当込み)
外国株:MSCI-KOKUSAI指数(円換算ベース・為替ヘッジなし)
EM株:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
フロンティア株:MSCIフロンティア・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)
日本REIT:東証REIT指数(配当込み)
外国REIT:S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース)
商品:S&P GSCI商品指数
日本債:NOMURA-BPI総合
外国債H:シティ世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース)
EM$債H:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円ヘッジベース)
米HY債H:BofA・メリルリンチ・US ハイ・イールド・マスターⅡ・コンストレインド・インデックス(円ヘッジ)
外国債:シティ世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)
米HY債:BofA・メリルリンチ・US ハイ・イールド・マスターⅡ・コンストレインド・インデックス(円ベース)
EM$債:JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース)
EML債:JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス-エマージング・マーケッツ・グローバル・ディバーシファイド(円換算ベース)

【出所】
(株)東京証券取引所、MSCI、スタンダード&プアーズ ファイナンシャル サービシーズ エル エル シー、野村證券株式会社、Citigroup Index LLC、ジェー・ピー・モルガン・セキュリティーズ・エルエルシー、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、WMロイター、短資協会、BBAデータを野村総合研究所Super Focus、トムソン・ロイター、ブルームバーグより取得し、野村アセットマネジメントが作成

 

要約すれば、①円/ドルでみた円安、②株式、REIT、債券は堅調、③商品は不調、④EM$債H、米HY債Hは、年間では堅調だが、年後半は不調といったことがあげられよう。

日本の投資家からみると、一昨年(2013年)に続いて、①の円安が海外への投資のパフォーマンスを引き上げた。一方、国内ではREITのパフォーマンスが、株式より高かった。これは海外でも同様であった。債券は、外国債Hのリターンが日本債、EM$債H、米HY債Hよりも高い点に注目したい。③、④とも絡むことであるが、原油安の影響が、一部のHY債や新興国債に悪影響をもたらし、スプレッドが拡大する一方で、先進国債の金利低下が続いたということである。

多くの家計は預貯金のウエイトが高い。現状では、その利息はほぼゼロである。一方、図1でみる17資産に均等に投資してもリターンは12.5%となる。通常のいわゆる4資産(日本株、外国株、日本債、外国債)の均等でも13.1%のリターンとなる。勿論、リターンは経済状態次第で変わりうる。とは言え、日本にない成長分野も多々ある。自分に合った資産配分や分散を図ることで現状を打破することができる。それは幅広い世界に触れるということでもある。

労働所得格差について

先のピケティ氏は労働所得格差以上に資産格差が大きいと指摘する。労働所得の場合、図2に示したように賃金カーブが存在し、平均的には50歳代前半でピークになり、その後はどの層も徐々に減少していく。

図2 賃金カーブ:男性

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【図について】
第1・十分位とは、低い方から数えて全体の10分の1番目に該当する者の賃金。第9・十分位とは、高い方から数えて全体の10分の1番目に該当する者の賃金。

【出所】
厚生労働省、平成25年賃金構造基本統計調査のデータより野村アセットマネジメントが作成

 

一方、資産の場合は、「資産額」×「リターン」で次期の資産額が決まる。ここに本人の年齢は入ってこない。資産配分をどのようにするか、また、そこに株式つまり資本の成長を取り込む仕組みが入っているか否かで、パフォーマンス格差は大きくなるだろう。

より開かれた世界を実感

以上をまとめておこう。少子高齢化に伴い、家計の自助努力の要素はますます強まる。確定拠出年金の拠出年齢上限の引き上げやNISA枠の拡大もそれを後押しするものである。資産運用にあたっては、資本成長の取り込みは言うまでもないが、資産配分によって、リスクの大枠を決め、国際分散投資の活用でリターン/リスクは改善するだろう。いずれにおいても、投資信託の役割は大きい。足元においても、原油価格の下落や為替変動など、様々な要素が多いのはいうまでもないが、預貯金任せにせず、自ら世界に飛び込んでいけば、より開かれた世界が待っていることが実感できるものと考えられる。

 

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