鵜目鷹目46. 日本経済のマクロとミクロの乖離

2015年11月27日掲載

日本株を考える上で、マクロ経済の視点では生産、物価、金利、マネーストックといった指標をみることが多い。ところが、バブル崩壊以降のデフレ環境下で名目GDPは伸び悩む一方で、日本企業はリストラを行うことで収益性を高めてきた。一方、賃金は非正規雇用の増加もあり全体としては伸び悩んでいる。今回は、この乖離を概観することで株式投資の原点である企業の収益性についてまとめておきたい。

日本株と名目GDPとの関係

図1 日本株と名目GDPの推移

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【注】
TOPIXは年度末の値を使用。

【出所】
TOPIXはDatastreamより取得し、野村アセットマネジメントが作成。名目GDPは内閣府。なお、1975~1980年度は1990年基準・68SNA、1981~1993年度は2000年基準・93SNA、1994年度以降は2005年基準・93SNAによるもの。

 

図によれば、名目GDPは2000年代に入って伸びていないことが分かる。株価の方は、89年12月がピークでそれ以降は下落、そしてボックス圏となっているが、バブルで行きすぎたバリュエーションの上昇を割り引けば、ボックス圏というのは名目GDPの伸び悩みと同期していると理解できる。

日本企業の売上高と営業利益の推移

図2 売上高と営業利益の推移

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【出所】
財務省、法人企業統計(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/)より野村アセットマネジメント作成。

 

非製造業、製造業の売上高は90年代初めから横ばいになっている。営業利益は90年代を通じて減少傾向であったが2000年代に入って上昇傾向にある。10年の苦闘の上、収益性が改善してきたと言える。ただ、それは売上高が増えない中での利益の増加である点に注意が必要である。

付加価値に占める従業員給与比率と営業純益比率の推移

図3 付加価値に占める従業員給与比率と営業純益比率の推移

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【出所】
財務省、法人企業統計(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/)より野村アセットマネジメント作成。

 

製造業、非製造業ともに従業員給与比率は低下傾向である一方で、営業純益比率(※)は上昇傾向にある。賃金が上昇しないことによって、購買力が上昇しないと結局のところ企業の売上は増えにくくなり、ジレンマに陥ってしまう。
(※)営業純益とは、営業利益から支払利息等を差し引いたもの

企業収益の増加と株価形成

日本株の投資主体別動向に目を向けてみると、かつて日本の機関投資家の売買シェアは高かったが規制によるリスク管理の強化もあって日本株保有比率は低下した。一方で、外国人投資家のシェアが上昇して6割を超えている。通常、金融緩和局面では株価収益倍率(Price Earning Ratio、以下PER)が上昇するいわゆる金融相場となるが、外国人投資家のシェアの高まりにより彼らの(国別)バリュエーション比較で15~20倍が一つの目安となっており、その範囲での割高割安での日本株投資判断がなされているものと考えられる。

このため、アベノミクスの異次元金融緩和下でも、日本株のPERは15~20倍で推移している(図4の□で囲った部分)。この水準は海外のPERとさほど変わりがないので、特にバブルという言い方は適当でないと思われる。従って企業収益の増加に見合った株価形成となっていると言えよう。

図4 日経平均とPERの推移

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【出所】
e-Auroraより取得し、野村アセットマネジメントが作成。

【注】
PERは1987年4月~2000年7月までは東証一部単体、2000年8月より東証一部(予想)を使用。

 

足元では日本は追加緩和が行われるか否か、米国では利上げがあるか否かに注目が集まっている。ところがマクロとミクロの乖離やバリュエーション動向、外国人投資家動向をみる限り、時間軸を長めに持つ投資家であれば、企業の収益力そのものに注目しておく方が好ましいと言えよう。

 

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